殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

そしてその具体的な方法に考えは何なのかと言えば、どこから来たかは適当に誤魔化しつつもダアトに来たのは預言にダアトで暮らすように詠まれたから親元を離れて一人で来たというように言った上で、幼い子どもらしく入り込むというものであった・・・勿論というかそんな事を預言として詠まれたなどということはなく、そういったことを言えば預言を信じるローレライ教団の人間としてはすぐに信じて自分を受け入れるだろうとの打算があってだ。

現にハヤテは船でダアトに来た際に教会に来てそういった事を言うと、そういうことならとすぐに居場所を用意された物であった。これに関しては予想はしていたものの、本当にあっさりと受け入れられた事を実際に目の当たりにしてみればハヤテもここまでとはと思ったものだが・・・その辺りは実際にダアトで暮らしていく内に分かることになった。それはダアトには孤児と呼べるような立場の子ども達を受け入れる孤児院のような場所が普通にあったことだ。

この辺りはダアトの醜聞に関わる事情があることがハヤテは後に暮らしていく内に推測出来た・・・それはダアトというかローレライ教団の所有する兵力である神託の盾という死んだ者達の家族が孤児になるパターンが多かったのだが、それらの子どもを下手に放っておくようなことが出来なかったのだ。下手にそんな子どもを死んでも構わないと放置して本当に死ぬこともそうだが、そんな風な事をされたからこそ周りの大人やダアトにローレライ教団など信用出来ないと食料を盗み出すくらいの悪ガキになる程度ならまだしも、ダアトにそんな子どもや成長した大人が集まったスラムのような物が出来ることを避けるためにもだと。

このスラムに関しては世界を二分する大国の一つであるキムラスカの首都であるバチカルにも下部の方にスラム化している場所があるのだが、それに関しては公然の秘密という形で表向きに話されることはほぼない。それはキムラスカという国でそれもバチカルという国主のお膝元がそんな場所だなどと言うのは醜聞に関わるというか、そんなことを話題にしてキムラスカの上層部に目をつけられてもろくなことにならないからだ。

しかしダアトやローレライ教団に関しては色々と違って敵を作りたくないというように思う者もいるだろうが、一応は国ではない上にダアトは人の行き来を制限出来ないというかそれが出来ない条件が揃いすぎている。船で食糧やらを輸入しなければダアトは瞬く間に苦境に陥ることもそうだし、教団の信者の中にはダアトの教会に訪れることを目的として生きている者達がいっぱいいて巡礼に訪れることは珍しくない・・・そしてそんな中でスラムの住民が行動を起こしてしまい、そういった者達に多大な迷惑をかけてしまえばいかなローレライ教団と言えども、不興の目や評価を向けられるのは避けられないことだろう。他に目立った領土を持たないというのもあって、管理体制はどうなっているのかと見られてだ。

そういったことはローレライ教団が預言により繁栄をしていると謳っているといったように見られているのも加わって、是が非でもそんな風に見られるのは避けねばならないことであるからこそダアトには孤児院といったような施設があって、そこにハヤテは入り込んだのである。

・・・ただ何故親と共に来なかったのかもそうだが、そうしてダアトに来たのだから預言を詠もうかと言われることもあった。ただ前者に関してもそうだが後者に関しても預言だからということで誤魔化すことは容易に出来た。先述のように預言に一人で行けと言われていたから一人で来たし、預言にはダアトでの生活の中では預言に頼ることなく生きるようにするようにと詠まれたから、預言はむしろ詠まないようにしてもらわないといけないと。

そしてそんな言葉に納得してハヤテの事を疑うこともなく預言についてを勧めることも周りは無くなった訳だが、本当に大丈夫なのかとハヤテ自身首をひねったくらいだ。この甘さを狙った自分が思っていいことなのかと思う形でである。









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