殺意を抱き手にかけるに誰かの意志など介在しない

ハヤテとしては二度目の親殺しに人殺しの経験であったが、心にさざ波一つ立たず平静な物である事をあっさりと受け入れた物であった。この辺りはハヤテ自身がよく理解しているが、やはり前世での親殺しの件でもう自分の中の殺人に関する倫理観のスイッチが、二度と切り替わらない形で変わってしまったのがあるのだろうと見てだ。

だからこそ自分が再度人を殺した事に罪悪感など感じないままにハヤテはすぐさまに次の行動に移った・・・借金取りが持っていた金を剥ぎ取れる分は剥ぎ取り、そしてそこから逃亡するという行動に。

これは単純にこの場にずっといて誰かが来たとしたならいくら納得出来る理由があったとしても、親殺しをしでかした子ども相手に周りの目や態度が同情的な物になどなるはずがなく、むしろ腫れ物を触るような目で見られると想定してだ。そして更に言うなら共に殺した借金取りの仲間とは言わずとも、その同類に目をつけられたなら良くて使いパシリにされる形になるか悪ければメンツを潰されただとか、何らかの報復を受けて殺される・・・そういったろくでもない未来になる可能性が非常に高いと見てだ。

故にハヤテは余計なことになる前にとさっさと逃げることにしたのであるが、その行き先が今現在いる所であるダアトという場所なのである・・・






「・・・しかしまぁ、ダアトに行くって決めた時から分かっていたことだけれど・・・改めてここって本当に色々とガバガバだよなぁ・・・そのおかげでここにいれるんだけど、本当になんて言うかって感じになるけれどね・・・」
そうしてハヤテは昔の事を思い出しながらどうかと思う部分についてを呟きつつ、ベッドから出て部屋の外へと向かう。






・・・ハヤテがダアトを逃げる場所に選んだ理由は、このオールドラントという世界で唯一といってもいい宗教であるローレライ教団の本拠地であると共に、その教団が教団として活動している最も大きな理由である預言という物を利用すれば安全に暮らせる場所を得れると見てだ。

この預言は第七音素というオールドラントを巡っている物を扱える第七音譜術士という存在が人なり天気なりの起こり得る未来・・・それも人ならそれに従えばより良いになると言われている未来を詠む物であって、大半のオールドラントの住民は預言を有り難がっていると共にそんな預言を最初に詠んだとされるユリアを崇めるローレライ教団を信仰していた。

だがそれは大半と言っているようにあくまで大多数はであって、ハヤテもそうだがこちらでのハヤテの両親も預言やローレライ教団などを信じてはいなかった。これはこちらの両親に関しては元々の人格が破綻していたこともそうだが、ハヤテを産んでも金がかかるばかりで不快だと言ったことに加えて・・・預言を詠んでもらうには無償ではなく一定の金が必要ということから、ローレライ教団を信仰しても何にもいいことはないと断じる形になったのだ。

この事に関しては二人の自業自得な部分が大きいとが見ていたが、それでも周りにもそういった金に余裕がある程度はあっても預言やローレライ教団を信用しないという者達が当時の周りに多かったことから、ハヤテもまた預言やローレライ教団を信仰する気は自分も人に知らせることなく失っていったのだ・・・天気を百発百中当てれる事に関してはすごいとは思うが、それは繁栄を詠んだのではなくこれから起こり得る事実を詠んだだけであるのではないかとハヤテは考えたのだ。本当に繁栄だけを詠んだ物なら誰一人として不幸になった者などいないはずなのに、そうでないのは繁栄じゃなくこれから起きる酸いも甘いもな未来を言葉にされた物が預言の真実なのではと。

しかしそれらを周りに言っても異端者扱いになるだろう事はローレライ教団の信者ばかりなこのオールドラントの状態から、下手に話してはいけないと理解出来た為に沈黙することにしたのだが、同時にそんな状況を利用出来るとハヤテは考えたのである。両親の元から逃げるにあたって、ダアトと預言を利用すればどうにでもなるのではと。









.
5/22ページ
スキ