大空に包まれたものと拒否したもの

・・・それで翌日、ツナヨシはユリアシティを出た。元々長居をするつもりはなかったのもある上で、ティアの事を見れて注意を言えたということで一先ず納得する形でだ。






(ツナヨシ兄さん・・・どうして私を信用してくれないの?私はすぐにでも兄さん達の役に立てるというのに・・・)
・・・それでユリアシティのティアの部屋の中。
先程テオドーロに話という名の注意を存分に受けて退出してきたティアだが、表向きは存分に反省したように見せていたものの部屋に戻ってくるや否や不満だという顔を浮かべ、ツナヨシに対して何故と内心で漏らしていた。






・・・ツナヨシもヴァンもティアの事が好きであるし、ティアも二人の事が好きである。そしてそんな兄二人がダアトでも優れていて優秀な存在だと本人達からもだがテオドーロから聞き及んでいることにより、ティアは自分も兄達同様優れた人物なのだとろくに働いてもないのに自認するようになっていった。自分の中に流れる特別な血があるのもあってである。

故にティアからしたならテオドーロやツナヨシ達のまだ早いだとかちゃんと段階を踏んでといった言葉の類いは、過保護であり余計なお世話だといった部類の物だと感じている上で、自分が神託の盾に入ったならすぐにでも役に立てるということを信じて疑っていなかった。


















・・・そんな風にティアが思っていることなど露知らず、ツナヨシは然程時間をかけずにダアトの神託の盾本部へと戻っていった。



「・・・戻ったようね」
「あれ、リグレット・・・ってことは兄ちゃんもやっと帰ってきたのか?」
「えぇ、今は謡将としてやることをやっているわ」
・・・そして自身の部屋に入るとそこにいたのはヴァンと共にダアトを離れていたリグレットであり、ツナヨシが口にした言葉にヴァンの現在についてを言った後に・・・ツナヨシへと近付き、自然に抱き付いた。
「・・・会いたかったわ、ツナヨシ」
「・・・あぁ、俺も会いたかったよ。それにご苦労様。兄ちゃんに付いていてもらって」
「大丈夫よ。それが私の役割だと理解しているから・・・でも少しだけこうさせて・・・」
「あぁ」
そしてそのまま普段のリグレットからはかけ離れた嬉しそうでいて、甘い女性としての顔と声を向ける様子にツナヨシは微笑を浮かべつつその背中を撫でる。






・・・リグレットは表向きはヴァンに忠誠を誓い、実質的なヴァンの副官といったような見られ方をされている。だがそれはあくまで表向きであり、今となってはリグレットの心はヴァンには無くてツナヨシへと完全に移ってしまっていた。

そうなるに至った理由はリグレットの弟がいた神託の盾の部隊が死んでも構わないといった名目でヴァンに戦場に送られ、その事を知ったリグレットはヴァンを襲い返り討ちにあった上で最終的にヴァンが目指す目的について聞いたことからヴァンに付いていくことにしたのだが・・・後に実はツナヨシがその部隊の者達の救助をリグレットの弟共々していたことを内密に知らされ、ヴァンの目的とはまた違う目的を持っていることを聞いた為にリグレットはツナヨシに付くと決めたのである。ヴァンには弟が生きているだったりツナヨシの目的を知ったなら弟を改めて殺される可能性があると言われたため、二度とそうさせないためにもという形でだ。

ただそんな風に決めたリグレットだが、ツナヨシの元々持っている人としての気質や優しさに触れていくにつれて次第に心惹かれていき・・・取引だとか上下関係ではなく純粋にツナヨシへと女性としてアプローチし、恋人関係へと発展していった。以前のままツナヨシを知らずにいたならヴァンと愛人関係と密かに揶揄され、決して甘い言葉も優しい抱擁などもない儀礼染みたような線引きのされた関係になっていただろうが・・・弟を助けたツナヨシの優しさを知ったが故に、最早ヴァンに対してそんな必要があっても肉体関係を結ぶなど嫌だと言える気持ちになる形で。









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