大空に包まれたものと拒否したもの

「・・・ちゃんと神託の盾の入り方について言ってあるんですよね、ティアには?久しぶりに会って言われたのが早く俺達の役に立ちたいっていう、色々とすっ飛ばした気持ちからの言葉だったんですけど・・・」
「うぅむ・・・その辺りについてはちゃんと言っているんだが、やはりお前達なら自分を近くに置いておくくらいの事なんか出来ると思っているんだろうから、そう言えるんだろう・・・」
「・・・確かにやってやれないかって言われたら出来なくはないですけど、あのままのティアが俺達の役に立つとはとても言えないですし、俺達も絶対に安全なまま任務をこなせる環境がずっと続くなんて事もないと思ってますけど・・・何より、まだあの子は真実を知るには若すぎる。だから順序を追ってちゃんと神託の盾に入って実力をつけてからにするようにと話をしてください。いいですね?」
「っ・・・分かった。あの子がちゃんとするようにはこちらも言っておこう・・・」
・・・それで時間が進んでティアが寝付いたのを見計らい、ツナヨシはユリアシティの市長で自分達の祖父であるテオドーロの元に向かった。
そしてツナヨシは先程の事を話終えた上でその幼げな顔からは似合わないほど真剣な瞳と声を向けると、テオドーロは明らかに圧されたといったように息を呑みながら頷くしかなかった。
(これでマシになればいいんだけど・・・この人にユリアシティの環境だから、あんまり信用出来ないんだよな・・・)
だがそんな風にテオドーロに頷かせたツナヨシの内心はそう出来たことに安心するのではなく、ハッキリ信用出来ないという気持ちを内心で言葉にしていた。






・・・とある時期からユリアシティへと居を移すことになったツナヨシ達兄弟だが、赤ん坊時代から住んでいてユリアシティから出ることがほとんどなかったティアはともかく、ヴァンもだがツナヨシもユリアシティの住民達にテオドーロの事は然程信用していなかった。それは何故かと言えばそうなる理由自体はハッキリしているが、人として本来持ち得る筈の熱を持ち合わせていないことにある。

その理由に関しては詳しく話はしないが、ユリアシティの住民達は基本的にその理由を元に動いている。というより行動基準になっていると言っても過言ではないのだが・・・それ以外の事に対しての執着だったり、考え方がダアトや他の国で暮らす人々などと比べるとあまりにも人として熱がないとツナヨシ達は感じているのである。

その為にツナヨシ達は正直な所としてユリアシティの住民や市長に関して好意を持てないと考えているのだが、それでもこのユリアシティにティアを置いているのは下手にダアトに来させて自分達の元に通い詰められても色々と困る上に、魔物や盗賊などが一切現れる事のない安全地帯だという部分がある・・・故にティアをテオドーロに任せているのだが、ツナヨシはあまりテオドーロに任せたくないのが実情なのである。実際にティアがユリアシティの考え方に染まっている部分をちょこちょこ見てきているのもあってだ。

ただそれでも一応は祖父という立場にある上でヴァンと違ってティアに関しては厳しい視線を向けるツナヨシにテオドーロは苦手意識を持ってはいるが、全くツナヨシの言っていることを理解出来てない訳ではないのを確認している為にテオドーロにティアを任せているのだ。熱量の違いこそあれど、ティアを大事にしたいという気持ちには違いはないために。









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