大空に包まれたものと拒否したもの

「・・・あっ、ツナヨシ兄さん!お帰りなさい!」
「あぁ、ただいまティア」
・・・そうして向かったのは自分達がユリアシティでかつて暮らしていた家。
そこに入った時に妹のティアが笑顔で気付いて出迎えてきたことに、ツナヨシもまた笑顔で返す。
「どうしたのいきなり?それにヴァン兄さんと一緒じゃないの?」
「ちょっと休みをもらったんだ。それで少しこっちに戻ってきたけど、兄ちゃんの方はダアトの外で活動してるからここには来ないな」
「そうなんだ・・・」
「・・・やっぱり兄ちゃんに会いたかったか?」
「それは確かにあるけれど、ツナヨシ兄さんに会えただけでも嬉しいわ!だってツナヨシ兄さんヴァン兄さんより会えないんだもん!」
「はは・・・」
そんなティアとツナヨシは兄妹としての会話を交わしていくのだが、ヴァンに関しての返しにツナヨシはたまらず苦笑いを浮かべる。色々とティアの言っている事がなんとも言い難い物だった為に。






・・・ヴァンに隠れて自分の目的の為に動くツナヨシだが、別にツナヨシはヴァンの事をティアも含めて嫌いだというわけではない。ただティアにはヴァンにもだが自分のやろうとしていることに巻き込みたくないと思い、距離を離したいと思っている。それはヴァンもツナヨシの事を知らないとは言え同じ気持ちだ。

その為に二人ともに自分達のやろうとしている事に関してはティアに話していないし、十以上歳の離れた二人は今は神託の盾の一員として働いていることからまだ神託の盾に所属せず働いてもいないティアは二人とは離れて生活している。何も知らないままにだ。

ただツナヨシもヴァンもそれでティアに会いたくないかと言えばそういうわけでもないし、ティアも二人の兄に非常になついている事から一人でもだが二人揃ってユリアシティに帰る事があるのだが・・・その頻度の違いもあるが、その構いかたの差からヴァンよりツナヨシの方にティアがなつくという結果を産むことになった。

これはヴァンよりツナヨシの方が年下の子どもに対しての扱いがうまかったことに加えて、ヴァンに比べてあまり頻繁にユリアシティに戻ることが無いことが大きかった。ヴァンは確かにダアトの外に行くことが多いがそれでもそのヴァンの尻拭いに自身の目的がある為、ツナヨシよりヴァンの方がユリアシティに帰る時が多いのだが・・・より優しく希少性の高いツナヨシが帰ってくる事をティアは喜ぶようになっていったのである。

ただヴァンとツナヨシの二人をどちらが好きかということに関して優劣をつけるまではティアはする気はないし、ツナヨシもヴァンも何も知らないティアを巻き込みたくないからこそ今の距離感でいいと思っている。だが・・・






「・・・ねぇツナヨシ兄さん。早く私も神託の盾に入って兄さん達の役に立ちたいのだけれど・・・」
「それに関してはちゃんと手続きを取って段階を踏んでからって言っただろ?導師守護役なら今の年齢でもどうにか神託の盾として働けるかもしれないけど、俺も兄ちゃんもちゃんとした手続きを経て導師守護役じゃない神託の盾として活動してきたから今の位置にいるんだ。だからもう少し待ってちゃんとした形で神託の盾に入ってきてほしいな。じゃないと一応上の方にいる俺達がそれを許したら示しがつかないし、ちゃんと力がないと神託の盾としての仕事で命を失うなんて事も有り得るんだから」
「・・・うぅ・・・」
そうして少し経って部屋でゆっくりと兄妹の会話を楽しんでいた二人だが、ティアが意を決して切り出したといった言葉にツナヨシがやんわりとした諭しの言葉で返すと、言い分がないというように言葉を詰まらせる。
(気持ちとしては俺達の役に立ちたいっていうものに関しては嬉しくないわけじゃないけど、それを認めて活動させるわけには色々といかないんだよな・・・俺達にとっても、本人にとっても・・・)
そんな様子にツナヨシは内心で考える。ティアの望み通りにすることは良くないことなのだと。









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