兄弟の分かたれた道の選択 後編

「・・・すみません。話を戻しますがペールから話を聞いたこともありますが、貴方には大人しく生きていて欲しいという気持ちがあるからこそ、貴方にそういった環境に入ってもらいたいと考えたんです。姉上がせめて貴方だけでもと生存を願ったよう、ガルディオスとしての復帰が望ましくないというなら人並みの生活くらいは出来るようにと。ですから気にする必要はありませんし、それでもという気持ちはあるかもしれませんがそこは貴方を手放しで信じるには色々と難しいからということで納得をお願いします」
「・・・ピオニー陛下達の事があるから、ですか・・・」
「そうなります・・・ですので考えることは色々とあるでしょうが、そこに関してはセントビナーに行ってからゆっくりと考えてください。私達はこの後すぐに動かなければなりませんからね」
「・・・分かりました、そうします・・・」
そうして空気を改めて話を進めていった上で離れなければならないと告げるカイに、ガイもまだ納得しきれてないながらも返事を返して頷くしかなかった。話はまだしたくとも忙しい合間を縫ってわざわざ会いに来たのに、それ以上の時間をかけさせることもそうだが兄の気遣いを無下に出来ないというよう・・・


















・・・そうしてカイはガイ達の元を離れていき、ガイ達はその後すぐにセントビナーへと送られることになった。それで数日といった時間が経ち、ガイ達はセントビナーへと辿り着いた。



「・・・よく来たのう。まぁと言っても表向きの事もあってそちらの事を歓待出来るわけでもないし、カイ坊やからは遠慮なく使ってやってくれと言われておる。故に今日はそちらが住む場所には案内してゆっくりしてもらうが、明日からはキビキビと働いてもらうぞ」
「っ・・・」
・・・セントビナーの軍の駐在地にて、マクガヴァンと向き合う形になるガイとペール。
だがそうして向き合っているマクガヴァンから出てきたのは数日前に別れたカイとはうってかわって随所に刺々しさを感じる言葉と視線で、たまらずガイは眉を寄せた。
「・・・不愉快か?わしの態度が」
「い、いえ・・・」
「正直に答えても構わん・・・というよりわしがこういった態度を取るのはお主が前にここに来た時の様子があったからだ。ファブレの従者としての顔を見せ、あのルークの信頼を得ているように見せていたあの姿からな」
「っ・・・!」
すぐにマクガヴァンはその様子についてをチクリと突きつつ機嫌が悪い理由を告げると、ガイはすぐに身を震わせた。確かにあの時ガイもいたからマクガヴァンに姿を見せていたことを思い出し。
「・・・ヴァンの妹の暴走という偶然の産物からお主と謡将はマルクトに来ることになったのは聞いておる。だがそこで一つ聞くが、お主はバチカルでどのようにしてそちらの二人にカイ坊やは接触しようとしていたか聞いておるか?」
「えっ・・・い、いえ・・・そんなことは聞いてませんが・・・」
しかしそうして続く話の中で話題を変えるとばかりに問い掛けられた質問の中身にガイは戸惑いを見せるのだが、マクガヴァンは目を閉じそっと首を横に軽く振った後に改めて目を開けて視線を向ける。
「・・・もし謡将の妹が行動しておらんかった場合、お主はルークを探しにマルクトにまでわざわざ来る必要はなかった。つまりはカイ坊やがバチカルに来るまでずっとお主はファブレにおるという事だが・・・カイ坊やの行動から見てお主達をガルディオスの生き残りとして引き取りに来たなどと、馬鹿正直にファブレに申し上げに来ると思うか?」
「なっ・・・そ、それは・・・!?」
「こう聞くだけでも分かるじゃろう・・・そんな馬鹿なことをすれば様々な事が台無しになるであろう未来が訪れることは。だからカイ坊やが取ったであろう手段として考えられるのはバチカルに滞在する中で、お主達がカイ坊やの事を探りにファブレから出てきたであろう時に問答無用で路地裏にでも引きずり込んでいくつか問答をし、ファブレから出るか出ないかを問い掛けた後・・・その答えの様子次第ではそなたら二人を行方不明のような形で始末をしていただろうということだ」
「「っ!?」」
・・・それで続けたマクガヴァンから出てきた本来の予定の流れについての話を受け、二人は目を驚愕に見開かざるを得なかった。言葉をハッキリとさせこそはしていないが、それこそもしもの場合は二人まとめて死んでいた可能性もあったということに。









.
25/29ページ
スキ