兄弟の分かたれた道の選択 後編

「・・・そこまでなのか、と思っているのかもしれません。ですが本来なら貴方のやろうとしていたことやその立場に関して、その行動がバレただけでもどれだけマルクトにとってもキムラスカにとっても大問題となるのか・・・それは前にも話しましたが、だからこそ貴方については処刑かもしくは牢獄暮らしが関の山ではないかというのが妥当といった話をされていたんです」
「・・・それをどうにかしたのが兄上で、今以上の事には出来なかった・・・というんですか・・・」
「はい・・・と言ってもこれに関しては私と言うより陛下や元帥が私の事をおもんばかってくれたからというのが大きく、私としてはルークが七年間ファブレで生きてきたような屋敷内では自由に過ごせて外には出れない・・・くらいになれば御の字だと思っていたんです。甘いと言われるのは承知の上ですが弟に死んで欲しくないからこそそういったようにしたかったところを陛下達が汲み取ってくれて、ギリギリこれくらいならいいだろうという破格の提案として今言ったような事に出来たんですよ」
「・・・そう、なんですか・・・」
だがそれでいかにカイが動いたから、ピオニー達も色々とやってくれたのか・・・それらのすり合わせがどれだけ濃密だったのかが感じ取れるその話し合いに関してに、ガイもすぐに神妙に話を受け止めざるを得なくなった。その苦労をただ否定するのなら、兄の苦労や情までもを否定することになるのだということに。
「ですので、貴方にはこの後に送る事になるセントビナーで暮らしていただきます。とは言え貴方がガルディオスと名乗るのは当然禁止になりますし、そう名乗れば即座にマクガヴァン元帥やグレン将軍が動く手筈になっています。その上で軍人という立場で活動するのも名前や顔が売れるのを考慮すると良いこととは言えませんので、マクガヴァン親子の指揮下でペールと共に働いてもらいます」
「・・・それは、分かりましたが・・・ここまで兄上に行動されては、俺はどうしていいのか・・・」
そうしてカイが以降の流れについてを説明していき、ガイは了承を返すのだがその手回しの様子に複雑そうな様子を見せる。兄がここまで動いてくれたこともだが、その在り方は自分とはガルディオスとしてあまりにも格が違うのだと言葉にはせずとも言われているような事に。
「・・・ガルディオスが襲撃された後と貴方を見付けた時の事についてをペールから聞きました。その時貴方は姉上が貴方に覆い被さるように亡くなっていた状態で気を失っていたと」
「・・・っ!」
そんな時にそっと悼むように目を閉じながら聞いた話についてを口にし出すカイだが、その中身を受けてガイはハッとしたような表情から体を震わせ出した。
「・・・どうしました、ガイ?」
「お、思い出したんです・・・屋敷に白光騎士団の兵士が入ってきてガルディオスの人間を殺していく中、姉上が俺の目の前で兵士に斬られ・・・俺を庇うように押しかかってきたことを・・・」
「・・・姉上の最期はそのような物だったのですか・・・そして話に聞いた貴方の女性恐怖症は恐らく貴方が姉上の最期の事を記憶からは忘れてはいても、体では覚えていたことから女性が近付くことに姉上を重ねてフラッシュバックのような事になったのだろうな・・・」
「・・・姉上・・・」
そんな反応にカイもすぐに目を開けどうかと問い掛けるが、姉の最期を思い出したと悲痛に語るガイの声にガイの患っていた女性恐怖症についての理由の推測を痛ましいという表情で行い、ガイもだがペールも悲し気な表情を浮かべた。姉の最期がいかなものかもそうだが、カイの推測が正しいのならガイを助けようとしたその行為がトラウマのような形で残ってしまっていたのだということに。









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