兄弟の分かたれた道の選択 後編

「・・・リグレットに対する気持ちを否定する気はないが、カイランド様が取られた行動はマルクト側からすれば正しい行動だ。それを否定するということは私の行動を肯定する事になるぞ、ティア」
「で、でも教官が殺されたのよ!こうしてアッシュは生きていて、ディストは降伏をしたというのに!それなのになんで兄さんはそんな涼しい顔をしているのよ!?」
「・・・ならば逆に聞こう、ティア。お前がファブレで私を襲撃しに来たあれは、何の為の襲撃だったのだ?」
「え・・・?」
ヴァンはそこから横目で話しかけていくのだがティアはその冷静さに却って何故そうなるのかというよう怒り出していき、その姿に自身の襲撃の事を持ち出されると途端に困惑を浮かばせた。
「お前が私をファブレに来てまで襲い掛かったのは私の計画についてを断片的に知ったからこそであろう。そしてその場にはリグレットもいた上でカイランド様の言われたような中身がその全貌だった訳だが・・・断片的にとは言え計画を知ったと言うならばこそ、私とリグレットが同士であり同じ罪を背負う者だということが分からぬのか?」
「そっ!?それは・・・でも、兄さんは教官の死を何とも思わないの!?」
「無論残念だという気持ちはある。しかし計画が順風満帆にいかないという事があるのはお前に話を聞かれた事から、以降もトラブルが起きないのは有り得ない訳ではないと我々は承知していた。それこそ道半ばでどちらかが倒れることについてもだ・・・だからこそこの結果については受け入れているが、リグレットの死を悼むばかりでお前は私達の計画やその人間性についてを全く考えようとしていない。今言ったように私もそうだが、リグレットがマルクトに殺される理由があった上でそのマルクトに降伏せずに立ち向かったという事実があるのにだ」
「っ!?」
それで計画についてを主題として話し合う二人の中でティアが言い負かされる前にと感情に訴えかけるような怒声を向けるが、それはリグレットの事も含めて何も考えていない証・・・そう告げたヴァンにティアは衝撃を受けて顔色から一瞬で血の気を引かせた。何もリグレットの事を分かってないと、敬愛している教官の事を言われた事で。
「それらを踏まえた上でお前が私を襲撃したのはそんな覚悟がお前にあったのか・・・いや、本当に私を殺してでも止めようという気はお前には無かったのだろう?それは先程私がお前に何の証拠もないのに事実ではないと否定しただけで、追求を止めて敵意にナイフを引っ込めたことから明らかだ」
「あ、あれは兄さんがそうじゃないって・・・」
「言っただろう、証拠もないのにと。だがお前はそれをあっさりと信じた・・・それがお前が私を本気で殺してでも止めるという気持ちがなかったというより、単に私がそうでないと否定してほしかったという甘い気持ちであったのが本音だろう。違うか?違うというなら否定の言葉と根拠を示してみろ」
「っ・・・それ、は・・・」
そんなリグレットと比較した上で自分を襲った理由に気持ちはどうかと追求をしていくヴァンに、ティアは息と答えを詰まらせ視線を背けた・・・事実、ティアはヴァンに否定をしてほしくて行動していた部分しかないとは言わなくとも大部分を占めていた事は間違いなかった為に。









.
13/29ページ
スキ