兄弟の分かたれた道の選択 後編

「・・・誰か、モースを連れて行け。監視をつけ、脱け出すような事などないような状態にする形でだ」
「陛下っ!?」
・・・対してインゴベルトが出した答えは、決心をつけたというような真剣に表情を引き締めた隔離をといった答えだった。モースはその答えにたまらず叫び声を上げるが、兵士達はインゴベルトの声に応える形でモースに近寄り脇を抱えるように手を掴む。
「離せっ!離せ貴様ら!私は大詠師モースだぞ!ここで離さねば預言から外れるのだぞ!離せぇぇぇっ・・・!」
そのまま兵士達に両脇を持たれる形で連れていかれるモースはジタバタ暴れながら叫んでいくのだが、大して強くないモースの抵抗では連れていく速度が遅くなるだけで謁見の間から消えるのにそう時間はかからなかった。
「・・・よろしかったのですか?我々としてはこうなることを望んで行動をしてはいましたが・・・」
「・・・確かに吹っ切れたかと言われれば、決してそうだとは言えぬ・・・しかし今のモースを見れば明らかに勢いで全てを誤魔化し、都合の悪いことは嘘にデタラメと押し流そうとするだろうしこの場にいさせるだけでも話は進まなくなるであろうことは目に見えていた・・・となればモースにはしばらく退出してもらった方がよいと思った上で、そちらを排除するといったような事をするべきではないと思ったのだ。色々と考えるという意味でもな」
「・・・ということは我々との話し合いのテーブルに立っていただけると言うことでしょうか?」
「うむ・・・確かに全部が全部信じられるかと言われればまだそうは出来ぬが、それでもヴァン達にアッシュの事実と二人を連れてきてくれたこと・・・それに何より預言による戦争の事をそちらが知っているとの事であれば、却ってここでそちらとの連絡が途絶えればマルクトがどのような行動を取るのか分からなくなると考えれば、モースの言葉にただ従うよりはよいと思ってな・・・」
「ありがとうございます、陛下」
それでモースが完全にいなくなった所でカイが確認を向けるとインゴベルトは完全ではないにしても、冷静に話をしたいと言葉にしていったことにジェイド達共々笑顔を浮かべ頭を下げた。様々にあったとは言え、これでキムラスカと話し合いが出来るという事に・・・


















・・・それからの話は全てが全て順風満帆ではないにしても、カイ達とインゴベルト達の話は進んだ。まぁモースが出ていった後の最初の話題としてアクゼリュスの救助に関しては実は神託の盾やダアトを欺く為の口実で、神託の盾に悟られないように独自で作っていたルートを使って住民達の救助を行っていた為、アクゼリュスの救助はしなくていいからこちらの時間はあるといったよう伝えた時はそこまで先に行動していたのかと目を丸くされたが。

ただそこからは真面目な話が続いていくのだが、やはり問題となったのはルークとアッシュとオマケに言うならナタリアの存在であった。何せ本物の『ルーク=フォン=ファブレ』はアッシュなのだが、猿ぐつわを外して会話をさせてみたところで出てきたのは・・・要約すれば俺はアッシュでキムラスカに戻ってくるつもりはなかったが、そこのレプリカは気に入らねぇから消えてほしいというもので、ならルークがいなくなった後のキムラスカはどうするのかと聞いても、うるせぇといった言葉でちゃんとした言葉で返答をしてくれなかったのである。

その為にルークとナタリアも含めた他の面々も色々と困るというかどう話を進めればいいのかという事になって、カイ達はしばらくバチカルに逗留することにするからそれまでの間はしばらくはアッシュとして牢に繋いでおくことになった。

尚、その際にはナタリアが彼は本当の『ルーク』なのですよ・・・といった言葉が出てきてルークもアッシュも共に表情を歪めたのだが、そこは自分はアッシュだと言ったことからそこを都合よく扱うことは出来ないというインゴベルトと親である公爵の言葉から、ちゃんとした見張りつきの牢屋に入れられる事になった。不満があるからと逃げ出されるようなことを阻止するという意味合いもあってである。









.
9/29ページ
スキ