兄弟の分かたれた道の選択 後編

「フ・・・私が話に出たような行動を取ったことに関してより、何故マルクトごときの言いなりになるような行動を取るのかと思われているのでしょう。ですが実際に今の話に出てきた計画の実現不可能だという言葉は嘘ではなく、私の手勢は全員捕らえられたかもしくは既に殺されており隠れ家といった場所も既に押さえられています。つまり私に打てる手はもうないということから、カイランド様に付き従っているのですよ」
「なっ・・・六神将も全て捕まったというのか!?」
「厳密に言えばリグレットにラルゴにシンクは言うことには従わないと死を選び、アリエッタは抵抗をして怪我をして療養中で、ディストは完全に打つ手が無くなったと見るや降伏をしたそうです。ただアッシュに関してだけはその命を奪うわけにはいかないからと捕縛前提で殺さぬようにということから苦労はされたとのことですが、結果はご覧の通りというわけです」
「っ!ならアッシュは神託の盾としてこちらに忠義を誓っているというのか!?」
「いえ、単純な話としてマルクトの言いなりになるのはゴメンだと言うだけでダアトにも謡将にも・・・ましてや大詠師になど忠義を持つわけなどなく、ただ黙って従う気などないからと反抗したのでしょう。何せアッシュも預言の中身についてを知ったのもありますが、キムラスカに戻るつもりなど無かったようですからね」
「「「っ・・・!」」」
そうして鼻で笑ってからいかに六神将が壊滅したのかをモースと話していくヴァンだが、アッシュのみここにこのような形で連れてこられた経緯とその心中についてを口にした時にインゴベルトと公爵は愕然としたような表情をアッシュに向け、その当人はたまらずに即行で視線を反らした・・・死を望んだ者達と望まれたが戻りたいという気持ちも少なからず持ち合わせている者という、何とも言えない構図になる形で。
「・・・まぁそういうわけで、最早私には計画を実行することは出来ない上にこうして拘束されたからこそせめてカイランド様に協力しようと考えたのですよ。どうせ死ぬというならせめて預言通りにならないようにしてから死にたいですからね」
「っ、ヴァン貴様・・・陛下!こやつらを捕縛するように命令をお下しください!こやつらは預言を侮辱した愚か者達です!」
「・・・」
「・・・陛下・・・?」
ヴァンはそんな構図に構わず馬鹿にするような視線と声を向けてモースはたまらず怒りインゴベルトに捕縛をと願うのだが、非常に悩ましげな表情を浮かばせてただ沈黙する様子にどういうことかと戸惑いを見せる。
「・・・今の話を忘れたのですか、大詠師?預言通りにすればどうなるかというのもそうですが、何より貴方には導師にスパイを付けたという事実が明らかにされたのですよ」
「っ!?」
「その上で先の話ではカイランド様は出してはいませんでしたが、その証拠とも呼べる物を掴んでいる・・・それに今の導師が被験者が病気により死んでいて、我々の用いるフォミクリー技術を使えば導師の身代わりは立てられるという話に乗ってそれを許容して今の導師を造ったという事実も知っておられます」
「「「「っ!?」」」」
ヴァンがそうなる理由は当然だろうとスパイについてを告げるとモースはハッとするが、続けられた更なる事実・・・イオンもまたレプリカでありそれをモースが知っていて許可を出したとの事に、モースだけでなく周りもまた一斉に驚愕に言葉を失った。最早何度目かになるか分からない、衝撃的な話に。
「・・・そ、それは本当なのですか謡将・・・?」
「えぇ、嘘ではありません。被験者の導師の容態が悪くなった・・・もっと言うならその年での死去が預言に詠まれていると分かった時から我々が持つフォミクリー技術を公的に認めるとは言わずとも、黙認させるためという意味で導師のレプリカを造ってはいかがかと持ち掛ければ・・・あっさりその言葉に大詠師は乗り、被験者の死去の後に今の導師を世に出すようにと許可をしたのです」
「う、嘘だ!デタラメだ!そんなものはヴァンが勝手に言っているだけだ!」
「ならば後で導師にアニスとやらに話を聞かれてはいかがですか、陛下?勿論大詠師に邪魔をされないよう捕縛か隔離などをした上で、アニスとやらには身の安全であるといったようなある程度の保証をする形でです」
「陛下!そんな言葉に乗せられてはいけません!この者達の言っていることを聞けばキムラスカの繁栄から外れる事になりますぞ!」
その驚愕から何とか声を絞り出したのはナタリアでヴァンは事実を事細かに明らかにしていき本人達に聞けばいいと言うと、モースは嘘だに聞くなというように声を荒げながらインゴベルトへと必死に投げ掛けていく。









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