追憶は謀らずも預言を狂わす
蔵馬が駆け出した先はどこか?それはその先にいた人物のみが知る事である。その人物とは・・・
人気のない森深く、蔵馬は薄暗い中一際目立つ朱い髪をなびかせある人物に笑顔で駆け寄る。
「アリエッタ」
「・・・クラマ!」
ライガとともにいたアリエッタを視界にいれ、名前を呼ぶ。アリエッタもそれに反応して蔵馬に駆け寄る。
「どうでしたか?イオン様は」
「あぁ、心配いらない。体調を崩しているから医師以外は極力部屋に入らないように言われているだけのようだ」
心頭だと表情で語るアリエッタに蔵馬は優しく嘘をつく。
「だがしばらくは様子を見ないといけない。イオンに会いに行くのは我慢してくれ」
「・・・わかった、です」
イオンにまだ会えない、そう寂しそうにうなだれるアリエッタに蔵馬は視線を合わせる。
「イオンが元気になればアリエッタも寂しくなくなるだろうから、イオンが戻るまでは俺がアリエッタの側にイオンの様子を見る時以外は一緒にいる。だから・・・いいだろう?」
愛し子を諭すには幼い言い方ではあるが、下手に飾った言葉はアリエッタには届きにくい。蔵馬はそれを理解しているから、態度でも表すためにやんわりと目をつむりながらアリエッタをハグする。
「・・・いや、です」
「・・・?」
だがアリエッタから聞こえたのは蔵馬の言葉の否定の声。とは言っても自分を拒むかのような声色ではない。人より遥かに優れたその頭脳に理解不能な事柄、蔵馬が内心困惑しているとアリエッタの声が耳に届いて来た。
「クラマの言い方だと、イオン様帰って来たらクラマ、離れるです。アリエッタ、そんなの嫌、です」
キュッと胸元を掴んで来た手は細かく震えている。
「・・・アリエッタ、クラマの事、大好きです。だから・・・離れないで・・・」
「・・・イオンが好きなんじゃないのか?アリエッタは」
「イオン様、アリエッタの大切な人です。けど・・・アリエッタ、クラマの事イオン様と違う意味で大好き、です・・・どう言えばいいのかわからない、けど・・・」
あどけなさの残る一生懸命な言葉に、蔵馬はハグの軽い拘束から抱きしめる抱擁へと無意識に力を強める。だがそれは不快な強さではない。寧ろ心地よさすらも感じるもので、「ンッ・・・」とアリエッタは気持ち良さそうに声を出して目をつむる。
「・・・ありがとう、アリエッタ・・・俺も一緒にいたい」
耳元に呟かれた言葉に、アリエッタは自然と蔵馬の首に手を回し自らも抱き着く体勢になる。
「・・・うれしい」
その一声に時間を忘れる程抱き合った二人。だが日も暮れる程の時間になると、ようやく二人は離れ蔵馬はシオンの元へと向かった。
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人気のない森深く、蔵馬は薄暗い中一際目立つ朱い髪をなびかせある人物に笑顔で駆け寄る。
「アリエッタ」
「・・・クラマ!」
ライガとともにいたアリエッタを視界にいれ、名前を呼ぶ。アリエッタもそれに反応して蔵馬に駆け寄る。
「どうでしたか?イオン様は」
「あぁ、心配いらない。体調を崩しているから医師以外は極力部屋に入らないように言われているだけのようだ」
心頭だと表情で語るアリエッタに蔵馬は優しく嘘をつく。
「だがしばらくは様子を見ないといけない。イオンに会いに行くのは我慢してくれ」
「・・・わかった、です」
イオンにまだ会えない、そう寂しそうにうなだれるアリエッタに蔵馬は視線を合わせる。
「イオンが元気になればアリエッタも寂しくなくなるだろうから、イオンが戻るまでは俺がアリエッタの側にイオンの様子を見る時以外は一緒にいる。だから・・・いいだろう?」
愛し子を諭すには幼い言い方ではあるが、下手に飾った言葉はアリエッタには届きにくい。蔵馬はそれを理解しているから、態度でも表すためにやんわりと目をつむりながらアリエッタをハグする。
「・・・いや、です」
「・・・?」
だがアリエッタから聞こえたのは蔵馬の言葉の否定の声。とは言っても自分を拒むかのような声色ではない。人より遥かに優れたその頭脳に理解不能な事柄、蔵馬が内心困惑しているとアリエッタの声が耳に届いて来た。
「クラマの言い方だと、イオン様帰って来たらクラマ、離れるです。アリエッタ、そんなの嫌、です」
キュッと胸元を掴んで来た手は細かく震えている。
「・・・アリエッタ、クラマの事、大好きです。だから・・・離れないで・・・」
「・・・イオンが好きなんじゃないのか?アリエッタは」
「イオン様、アリエッタの大切な人です。けど・・・アリエッタ、クラマの事イオン様と違う意味で大好き、です・・・どう言えばいいのかわからない、けど・・・」
あどけなさの残る一生懸命な言葉に、蔵馬はハグの軽い拘束から抱きしめる抱擁へと無意識に力を強める。だがそれは不快な強さではない。寧ろ心地よさすらも感じるもので、「ンッ・・・」とアリエッタは気持ち良さそうに声を出して目をつむる。
「・・・ありがとう、アリエッタ・・・俺も一緒にいたい」
耳元に呟かれた言葉に、アリエッタは自然と蔵馬の首に手を回し自らも抱き着く体勢になる。
「・・・うれしい」
その一声に時間を忘れる程抱き合った二人。だが日も暮れる程の時間になると、ようやく二人は離れ蔵馬はシオンの元へと向かった。
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