兄弟の分かたれた道の選択 後編

ただそういった裏事情は明かせずとも、与えられた役割を果たすという意味でもルークと共にキムラスカに戻らなければならないとガイは考えた。故にルークにジェイド達と話をつけてセントビナーの宿に泊まった後、ヴァンとの合流地点でありキムラスカとマルクトの国境であるカイツールという場所に向かうことになったのである。






「・・・行ったか、ジェイド坊や達は・・・」
・・・そうしてセントビナーから出立したジェイド達だが、その光景を街の中から見ていたマクガヴァンはそっと右目の眉を上げながら軍の駐屯地の方へ戻っていく。今となっては好好爺の面が強いが、昔のようにただならぬ存在と思わせる緊迫感を滲ませながら・・・



















・・・そんな風に徒歩によりセントビナーから出立したジェイド達。本来ならファブレの人間であるルークやダアトの導師であるイオンの為に足となる辻馬車辺りを用意するのが普通の筈なのだが、元々使うはずであったタルタロスであれば大丈夫だったが途中にあるフーブラス河が越えられないことから、徒歩で行くのは仕方無いということになった。

とは言え徒歩はまだしもそんなルークにイオンの事を放っておく訳にもいかないからと、タルタロスから共に脱出した兵士達が護衛を担当して周りを固めて進行していった。特に危険に合わせないようにと守られる形でである。

そんな形でジェイド達は進んでいき、道中で特にトラブルに見舞われることもなくフーブラス河を越えて・・・カイツールまで辿り着いた。






「・・・ガイの話だとここで師匠が待ってるってことだよな?」
「あぁ、その筈なんだが・・・」
・・・そうしてカイツールの国境のマルクト側の入口にて。
辿り着いたその場所でルークが口にした師匠というヴァンを指し示す言葉に、ガイも辺りを見渡す中・・・
「・・・来たか」
「師匠!」
・・・近くの建物からちょうどといったタイミングでヴァンは出てきて、ルークはすぐさまに嬉しそうに駆け寄るが・・・
「ヴァン・・・!」
・・・その中でティアが敵意に満ちた表情を浮かばせ武器に手を伸ばしたことに周りの面々は張り詰めた空気に一瞬で変わるが、その中の一部の面々は冷やかな様子を浮かべていた・・・




















・・・そうしてティアを一先ず落ち着かせることと事情のすり合わせをするため、ヴァンが出てきた休憩所で一同は話をすることになった。付いてきた兵士達は中に入るには人が多すぎるということで、外で待機するという形でである。



「・・・ということは貴方からすれば道中に我々を襲った神託の盾は貴方の手の者ではないと、そうおっしゃるのですね?」
「・・・そちらとしては気分が良くないのであろうことは承知していますが、あくまで彼らは表向きは配下というだけで私の私兵ではないですし命令も下していませんので・・・」
そうして一通り話が終わるのだが、ジェイドの抑えてはいるが明らかに疑念の強い声と目にヴァンは居心地が悪そうに否定を返すしか出来ずにいる。
(・・・ヴァンの言ってることは嘘の確率は高いんだろうが、かといってそれを言ったらなんで俺がそれを知ってるのかって話になるからそれは黙るしかないよな・・・色々な意味で・・・)
ただそんな光景をガイは何とも言えないままに沈黙しながら見るしか出来なかった。ヴァンが怪しいのは確かでマルクトの為にも行動したいが、かといって自分の為には黙るしかないしヴァンを見捨てることも出来ないからこそ黙るしかないと。









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