兄弟の分かたれた道の選択 前編

キムラスカの首都であるバチカルはグランコクマから見てかなり遠い位置にある。単純に今持ちうる最速の交通手段を用いたとしても、どうあがいた所で十以上の日数・・・いや、天候次第では月を跨ぐ可能性も無いとは言えないくらいに遠い場所だ。

そんな土地でもしファブレにガルディオスの生き残りが何かをしたとしたなら、どうあがいた所でマルクトのせいではないと弁明する事は不可能であろう。そもそも敵国であるマルクトの生き残りであるガルディオスがそんなことをしたなら宣戦布告に復讐といったように捉えられるのはまず間違いなく、ならばこちらもやってやるとマルクトに連絡が来た時には戦争開始を告げる宣戦布告の書状が来るとなるのは明白だ。

それを阻止したいなら今ファブレにいる生き残りにファブレから穏便に出ていってもらうのが一番安全であり、確実な方法であると言える・・・復讐を止めるかどうかを悩んでいるからファブレにまだいますだとか、復讐はしないがファブレにはいますなんて言うような都合のいい言葉を聞いて、いざ行動に移されれば目も当てられない事態になるのは間違いない。

かといって言い方は悪いが外傷がないと見えるような暗殺などの手段を取るのもそこまで良い手段ではない。何せキムラスカのバチカルという首都の中のファブレという国の中でもトップクラスに重要な人物が暮らす屋敷で、ペールに加えてガルディオスの生き残りという存在の複数名が同時期かもしく近い時期に亡くなるのは、周囲の人物から不審がられる可能性は決して否定は出来ない。それにまだペールは老齢の身であるから死んだのは歳のせいと誤魔化すことは出来るかもしれないが、カイと程近い年齢のガルディオスの生き残りの事を考えれば健康上の問題から有り得ることなのかと疑問に思われるだろう。

そう考えればこそ一番穏やかに済む処理はそれこそガルディオスだなどと言うこともなく出ていってもらうのが妥当なのだが・・・それも当人達の意志をそう固めてもらえると確約してもらえるとも限らないどころか、下手に接触してマルクトが自分達の生存を知っているならいっそ復讐に踏み切れば良いのではと思われるのは、ピオニーやカイ達からしたなら最も避けたい事態だった。

ピオニー達からしたならキムラスカとの戦争は是が非でも避けねばならないことだし、それらの事情を説明して引いてくれる可能性は決してないとは言えないだろう。だがダメな方の可能性・・・マルクトが復讐を認めないというならこちらの思惑に巻き込んでやると、ファブレへの復讐を無理矢理に達成させようとしてくる事も決して否定出来ないと感じているのだ。復讐を果たすという道を選ぶならそういった倫理で説得しようとしても聞く耳を持たないどころじゃない事態を引き起こしてくる可能性も。

だからこそピオニー達としてはこのガルディオスの生き残りに関してを最大限に警戒せざるを得なかった上で、出来る限り早くそれらの不安を払拭したくて仕方無かった。今後のマルクトもそうであるが、何よりオールドラントの存続の為にも・・・






「・・・やむを得ません。今は手を割きたくはありませんが、チップかザトーのどちらかをファブレへと内密に派遣するようにしましょう」
「・・・二人のどちらかを派遣ということは、その生き残りを殺すつもりだと言うのか?」
「そうしたくはありません・・・ですが最悪の事態を考えるなら、その可能性も考慮するべきかと思います」
・・・そうして重苦しい空気になっていた場だが、カイはピオニーの疑問の目と声に覚悟しての事だと表情を引き締める。まだどうなるか分からないが・・・最悪、殺してもらうことを視野に入れてと。









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