兄弟の分かたれた道の選択 前編

カイを養子に取る・・・これはどちらかと言えばカイに報いる部分の強い考えからの物である。陰日向で頑張ってくれたカイに対してガルディオスが健在であるという証明をピオニーが後ろ楯になる形で出すためのだ。何しろガルディオスが滅びて十五年という時間が経っていて、生き残りがいないというのが人々の認識になっているのだ。

ここでただカイが生きていましたからガルディオスの復興をしますなどと宣言した所で本当にそうなのかと疑われることもそうであるし、今更だという声が少なからず出てくるのは避けられないだろう・・・だがピオニーからの後押しがあれば話は別だ。

流石に皇帝陛下直々の言葉となれば反対や疑惑の声は上がりにくいだろう事を考えてである。その上でカイ自身がカイ=キスクという呼び名で裏でだけではなく表で活動してきた経緯もあって、人々の反感は抑えられるというわけである。何せヴァン達が調べたようカイがマルクト軍で活動してきた中身は好意的な物ばかりで、大佐という地位にまで着いたのは裏での活動もあってではあるが、それでも認められるにはそこまで手柄であったりが不足しているというような物でも無いのである。

故にこそピオニーからの後押しがあればカイのガルディオス復帰はやりやすくなると見ての物であるのだが、前述のようにそれだけではなくローレライ教団にヴァン達を排除するための呼び水にするためだ。と言ってもあくまでそれはそこまで重要視していないというより、きっかけ程度と考えてだ。

・・・オールドラントにおいて重要な事柄におけるほど、預言に頼った判断をするのが正しいといった見られ方をするものである。それが国の行く末に関わるものであるなら尚更である。何故なら預言の恩恵を受ける人々が多いからこそ、その預言に頼った政治を行うのも当然というよう=で繋げる者が多いからだ。

だがカイとその手の者による調査も相まって元々からダアトやローレライ教団、それにヴァン達という面々を快く思わなくなったことからピオニーを始めとした一部の面々は預言による政治をやるつもりは一切なくなると同時に・・・ローレライ教団をいずれ来るときの為にマルクトから排除する事を目的としていた。

現にカイを養子に取るといった処置がそうだ・・・マルクトとしては預言が詠まれていたから養子に取ったなどということには発表しない上で、ダアトが文句を言ってきたり何か探りを入れてきたりなどしたなら後の為の攻め立てる言い分を揃える予定であった。

そしてヴァン達が来たことに関してはピオニーにカイからすれば予定通りであったのだが・・・ヴァンが手紙を誰かに送るということや、その宛先が誰かが探った結果として分かったことは完全に想定外以外の何物でもなかったのである。現に最初にそれを知ったのは部下からの連絡を受けたカイであるが、まさかと目を見開いた物であった。

そして気を取り直しつつもカイがそれを報告した結果が今のような事になったのである・・・ピオニーが思わず嘆かざるを得ないような、自分等にとってかなりの確率で爆弾になりかねない状態だと認識するような事に・・・









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