兄弟の分かたれた道の選択 前編

カイはそうして動こうとし出すマクガヴァンの手伝いを始めたいと切り出した。この辺りは貴族の人間としてでもあるが、元々の素質として恩義に篤く人の為に動くことを主としたいカイであったからと言えるだろう。そこにマクガヴァンに助けられたという事実もあってだ。

しかし最初マクガヴァンはその申し出を固辞しようとした・・・何せ気持ちはありがたいし立派というように思いはしても、当時はまだ七歳程度の子どもで身分も滅ぼされたガルディオスの生き残りという立場を隠して生きていかなければならないカイの事を考えれば、そんな子どもの手を借りる訳にはいかないと。

しかしそうして断ろうとしたマクガヴァンに対しカイが引かなかった上で、影で動くなら表向きに立場のある者達が動けば目立ちかねないことから自分が代表とは言わないが、その為に一役買いたい・・・というカイの熱意と言っていることが間違いではないということから、カイをちゃんと成長させる傍らでその役を担ってもらおうとマクガヴァンは決めた。

・・・それで以降カイは自分と同じようにホドで生き残った少数の者達をまとめあげる形で動いていき、ダアトにローレライ教団の内情を探っていってヴァン達の事も知っていった。ヴァンが生きていることもそうだが、裏でこんなことをしていたのかを知る形になる上で・・・もう説得は無理だろうというのを半ば確信する形でである。

そんな風に考えていたカイは優秀に動く自身の手の者からヴァンがファブレの屋敷に足しげく自分の目的の為に通っていることも把握していたが、流石にそこにペールと隣にいるであろう姉弟にまでは気付かずにここまでいたのである・・・それこそピオニーが言ったように、ファブレの中にガルディオスの生き残りが入り込んでいるなんて普通は考える筈もなかった為に・・・






「・・・さて、どうする?正直俺としちゃ一刻も早くペールとやらと共にいるだろうお前の姉か弟かにファブレから退出してもらいたいところだが・・・」
「・・・陛下の口振りからして、その退出には生死は問わないといったような響きがあるように思いますが・・・」
「言葉を選ばず言ってしまえばその通りだ・・・確かにガルディオスの生き残りに対しては同情はするし、こちらとしても手厚く迎えてやりたいとは思いはする。しかしだ・・・お前の生存に養子の発表を撒き餌にして釣りたかったのはそんなもんじゃない。お前からすれば気分は良くないかもしれんが、針を外すことすら面倒な外道がかかったようなもんにしか思えない代物なんだよ・・・こんな形での二人目か三人目かのガルディオスの生き残りの出現なんてな・・・」
そうしてピオニーが話を進める中でカイはそのニュアンスについてを問い質すが、返答の言葉は非常に重くてたまらず表情を苦み走らせるような物にピオニーは変わってしまっていた。






・・・マクガヴァンの指揮の元でひっそりと、だが確実に成果を挙げる形で活動していったカイの事に関しては密かに生存を伝えられていたピオニーの元にも当然届けられていた。ダアトが何をしているのかに、その最終的な狙いはなんなのか・・・と言ったような調査の結果も伴われるような形でである。

そんな報告を受けたピオニーは預言なんだからそんなことないだろうと疑うより、納得出来ると信じる気持ちの方が強かった・・・カイの事に関してはマクガヴァンがそんな意味のない嘘をつくわけがないと思っていたからであるが、その報告の中身に関してはピオニーとしては元々から預言やローレライ教団というものに関してをあまり心地好くない物と思っていたからである。マクガヴァンからの報告もそうであるが、未だに独身の実子無しという状態を貫いているのは預言に自分の結婚したかった相手との結婚が詠まれず、その相手が自分ではない人物と預言だから結婚したという経緯もあってだ。

だからこそ預言がそんな都合のよい事ばかり詠まれた物ではないということや、ローレライ教団もそんな誰もが誰も例外なく救ってくれる筈ないということを証明してくれたカイの事をピオニーは非常に買う傍ら、ガルディオスの復興と共にローレライ教団やヴァン達を排除するという両面をこなせる策を思い付いた・・・それがカイを自分の養子とする、という物であった。









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