兄弟の分かたれた道の選択 前編

・・・そうして宿にカイの後に付いていって入ったリグレットはカイとどれだけ補給が必要についてを話し合い、それらがまとまった所でカイはゆっくりとするようにと笑顔で口にしてから宿から退出していった。






「・・・いかがでしたか、閣下?」
「間違いない、あの方はカイランド様だ。私が見紛う筈もない」
「そうなのですか・・・」
・・・それで宿の一室にて変装を解いたヴァンとリグレットは顔を合わせながら話すが、断定の言葉を口にするヴァンにリグレットは当たり障りない言葉しか漏らす事が出来なかった。まさかこんなに早く会えるのかといった想いもあって。
「ただ本来ならこれでグランコクマからおさらばといきたいところだが、数日滞在をすることになっているのだからその間は時間を有効に活用するためにも様々に情報を入手していきたい。特にカイランド様の事をどう思うのかという民の評価についてをだ」
「・・・何故民の評価についてなのですか?」
「・・・その評価次第でガイラルディア様に報告すると共に、どういった意見を具申するかについてを決める為だ」
「・・・分かりました。では情報を集めて参るよう、部下に命令を下しましょう」
その上でヴァンが口にした命令の中身にリグレットは眉を寄せるが、どこか何とも言いがたそうな返しにそれ以上は追求せずに頷いて返した。まずは情報を集めると。


















・・・そうして十数日後に時間は進み、ファブレの屋敷の使用人の部屋へと場所は移る。



「・・・兄上は間違いなく本物・・・そしてあの時兄上は脱出に成功し、こういった事からガルディオスの末裔として活動することを自重しながらも、マルクト軍の中で動いて大佐まで上り詰めた・・・と・・・」
「カイランド様・・・」
・・・置いておいた任務に向かわねばならないということからバチカルにはすぐには行けないため、グランコクマから手紙を出させていただきますという前置きが書かれたヴァンからの手紙がガイ宛に届いた。
それで早速と周りに誰もいない事を確認しながらその中身を横並びで見ていく二人だが、途中まで見たその中身に二人は共に複雑さを滲ませた表情を浮かばせるしかなかった・・・今この場に復讐の為に入り込んでいる二人に対し、カイの行動は途中まで読んだだけでもいかにガルディオスの生き残りとして頑張って動いてきたのか・・・そう考えると自身らと違う道を歩まざるを得なかったカイを批難出来ないのは当然だが、自分達は何をしているのかという気持ちにもなった為に。
「・・・加えて申し上げるなら民の評価はむしろ悪く言う者などいるのかという程に誉める者しかおらず、容姿端麗で品行方正と来ていてピオニー陛下が養子として迎え入れるのも納得だという評価ばかりで、カイランド様はマルクトの人々に受け入れられているのは疑いようはない・・・と・・・」
「・・・そこまでカイランド様は動かれておられるのですか・・・」
「・・・なっ!?」
「どうされましたか、ガイラルディア様!?」
更に続く手紙の中身に二人は複雑さが増したように重い声色になっていくが、先に手紙の中身を確認していたガイが驚きに声を上げたことにペールは心配そうに声をかける。









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