兄弟の分かたれた道の選択 前編

・・・そういったような複雑な気持ちになりながらもヴァンを乗せた船はケセドニアに着くのだが、そこでバチカルより出した手紙から召集された自身の腹心とも呼べる存在のリグレットを始めとした神託の盾と共にヴァンは行動を開始した。本当にカイランドが生きているのかにどこにいるのかの捜索に、出てきた情報の精査をするためにと色々とだ。

それでそうして色々と情報を探っていく内に、カイランドが今いるのはマルクトの首都グランコクマであり現在は皇帝の養子となった事をアピールするような形で動いているということが調べで分かった。そしてカイランドがどのような経緯で今まで生きてきたのかについても・・・






「・・・本人の証言によれば白光騎士団がガルディオスの屋敷を襲撃に来た際、一か八かマルクト軍を急いで呼びに行くのと同時に修羅場から脱出をするように父上から言われて血路を開いて九死に一生を得て、当時のマクガヴァン元帥の元にまで辿り着いたがホドが消滅したことに加え、その後すぐにガルディオスの生き残りだと名乗りを挙げたなら報復戦となると元帥に言われたことから、元帥と当時の皇帝とそこに近しい者達にしかカイランドの生存は伝えられることはなかった・・・そしてそうして過ごす中でせめてマルクトの為に役に立ちたいとガルディオスの名を名乗ることなくカイ=キスクと名乗り軍に入る中、戦果を挙げていく内にピオニー陛下の目に留まり養子の話を持ち掛けられたので動くことにした・・・か・・・」
「その話が真実かどうかはまだしも、カイ=キスクという人物に関してはマルクトの軍内でも以前から評判になっていたのは確かなようです・・・剣術の腕前もさることながら譜術も使え、軍の指揮も出来て人格者だと評判もよく死霊使い以来に現れた大器だというような言われ方をされていったと報告にあります」
「・・・つまり、それだけカイランド様は立派に成長なされたということか・・・」
・・・そうしてケセドニアから出てグランコクマに向かう自身の所有する神託の盾の船の一室にて。
まとめあげられたカイランド・・・いや、『カイ=キスク』という人物の報告書を前にして、机の前にリグレットがいるにも関わらず椅子に座るヴァンは顔を複雑そうに歪める。
「・・・閣下がそのような表情をされるのは、カイランドという人物に対して思われる所があるのは分かりますが・・・どのような人物なのですか?」
「・・・私の知るカイランド様は大方報告書にある通りのお方だった。品行方正で剣の腕も立ち、ガイラルディア様も他のガルディオスの者達も全てカイランド様なら次代のガルディオスを継ぐに相応しい方だと皆が思うようなだ・・・だがそれも預言保守派にファブレの白光騎士団のせいでガルディオスが滅び、後に分かるガイラルディア様の生存の判明まではカイランド様も亡くなられたのだと悲嘆に暮れたものだが・・・そんなカイランド様が報告書の通りに生きていて活動していたというのなら、あの方の性格が変わっていないのであればマルクトやガルディオスの為に粉骨砕身して奮起して動かれていたのだろう事は容易に想像はつく。しかしもしそうだというなら、私はカイランド様の想いを踏みにじるような事をすることになる・・・今更計画を止める気はない上に出来ることなら説得したいとは思うが、それが出来ぬと思うと気が重くならざるを得んというのが私の正直な胸の内だ・・・」
「閣下・・・」
そんなヴァンにどんな気持ちがあるかを尋ねたリグレットだが・・・進まねばならぬからこそ障害になりうるということを望みたくないと切に漏らしていくその姿に、リグレットもただ声を漏らすしかなかった。カイへの想いがどれだけあるのかをその言葉の数々から、リグレットも感じ取った為に。










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