追憶は謀らずも預言を狂わす
「随分と立派に再生させましたね、クラマ・・・」
白いローブを着たシオンは蔵馬が再生させた森を視界に入れると、以前よりも樹木の太さがどの木も一回り大きい状態に呆然としながら蔵馬を向く。
「構わないだろう。樹木が強い分には別にシオンにも文句はないはずだ」
シオンに返事を返しながら蔵馬はローブのフードを取る。
「さあ、クイーン。あなたの住家に行こうか」
口元に軽い笑みを浮かべ、蔵馬はクイーンの先導をとり歩きだす。その蔵馬の後にクイーンは付いていく。その光景を見ながらシオンはフードを取り、クイーンを追い越して蔵馬の横に移動する。
「・・・相変わらずあなたはアリエッタに関する事は敏感なんですね」
横につけたシオンはイオンとは違い、皮肉で彩られた笑みと言葉を蔵馬に送る。
「悪いか?」
だが、蔵馬は大して気にするでもなくフッと軽く笑いシオンを一蹴する。
「・・・だからあなたはからかいがいがないんですよね。アリエッタはあんなに可愛くあなたの事に反応するのに」
蔵馬の返事に歳相応の悔しさを見せるシオン。その顔には導師として活動していた時のような事務的な偽りの表情ではなく、彼の本質が現れていた。
「アリエッタがか?それは嬉しいな」
「・・・はあ、本当にあなたには敵いませんね」
まだ肉体年齢では十七歳で、レプリカという事で言うなら七歳の人物から見せられる大人のみが見せる余裕の笑みを向けられシオンは心底蔵馬に脱帽する。
だが、それも彼の実情を知っているシオンからすれば仕方ない事だと理解していた。
それは今から二年程前の出来事だった。
「預言によれば今年は僕が死ぬ年・・・レプリカ情報もモースに渡した事ですし、多分そろそろと言った所でしょうか・・・」
まだシオンがイオンの名を改めていなかった頃、シオンは自らの死が預言に詠まれていたことに絶望してヴァンに協力して預言を覆す為に自らのレプリカ情報をモースに渡していた。
そんなシオンは体調不良を感じ取っており、そう遠くない内に死ぬであろう事を理解し部屋で一人窓の外をぼんやり眺めている日々が続いていた・・・
だが、そんな変わらない日々に唐突に変化が起こった。
‘バッ、トッ’
「・・・えっ!?」
いつものように外を眺めていると、窓の外にいきなり朱色のなにかが現れた。そしてその何かはその窓をいきなり開けて部屋に忍び込んできた。一連の流れる動作にただシオンが驚いて止まっていると、朱色の人らしき者が立ち上がりおもむろにシオンの前に歩いてきた。
「・・・成程。随分弱っているようだな」
近付いてきた人物はシオンの顔を見るなり、何やら懐に手をやる。すると懐から出てきたのは植物の種で、何故かいきなり発芽しだし立派な植物に瞬く間に変貌した。
「煎じてやる。これを飲め」
「・・・は?あなたはいきなりなんなんですか?」
導師である自分になんと不遜な、そういった気持ちを含ませシオンの言葉は不快感に満ちた物になる。
「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は蔵馬。アリエッタに頼まれてお前の様子を見に来た」
「アリエッタ!?」
だが一転シオンはアリエッタと聞き、動揺を露にする。
「アリエッタはお前の部屋に近づけられないように監視されているとアリエッタから聞いた。だから代わりに俺がお前の様子を見に来た」
「アリエッタが・・・って・・・あなたは何をしているんですか?」
「見れば分かるだろう。薬を煎じている。丸呑みでも効果は変わらんがな」
ゴリゴリ音をたて、丸薬状に出来上がった塊を何故か蔵馬が取り出したすり鉢から持ち上げるとシオンにそれを手渡す。
「どういう事ですか?薬などと?あなたは医者・・・ではなさそうですけど・・・」
渡された丸薬を受け取らず、シオンは蔵馬に警戒心を持って質問をする。だがシオンの待っていた答えとは更に別の答えにシオンは驚かざるを得なくなる。
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白いローブを着たシオンは蔵馬が再生させた森を視界に入れると、以前よりも樹木の太さがどの木も一回り大きい状態に呆然としながら蔵馬を向く。
「構わないだろう。樹木が強い分には別にシオンにも文句はないはずだ」
シオンに返事を返しながら蔵馬はローブのフードを取る。
「さあ、クイーン。あなたの住家に行こうか」
口元に軽い笑みを浮かべ、蔵馬はクイーンの先導をとり歩きだす。その蔵馬の後にクイーンは付いていく。その光景を見ながらシオンはフードを取り、クイーンを追い越して蔵馬の横に移動する。
「・・・相変わらずあなたはアリエッタに関する事は敏感なんですね」
横につけたシオンはイオンとは違い、皮肉で彩られた笑みと言葉を蔵馬に送る。
「悪いか?」
だが、蔵馬は大して気にするでもなくフッと軽く笑いシオンを一蹴する。
「・・・だからあなたはからかいがいがないんですよね。アリエッタはあんなに可愛くあなたの事に反応するのに」
蔵馬の返事に歳相応の悔しさを見せるシオン。その顔には導師として活動していた時のような事務的な偽りの表情ではなく、彼の本質が現れていた。
「アリエッタがか?それは嬉しいな」
「・・・はあ、本当にあなたには敵いませんね」
まだ肉体年齢では十七歳で、レプリカという事で言うなら七歳の人物から見せられる大人のみが見せる余裕の笑みを向けられシオンは心底蔵馬に脱帽する。
だが、それも彼の実情を知っているシオンからすれば仕方ない事だと理解していた。
それは今から二年程前の出来事だった。
「預言によれば今年は僕が死ぬ年・・・レプリカ情報もモースに渡した事ですし、多分そろそろと言った所でしょうか・・・」
まだシオンがイオンの名を改めていなかった頃、シオンは自らの死が預言に詠まれていたことに絶望してヴァンに協力して預言を覆す為に自らのレプリカ情報をモースに渡していた。
そんなシオンは体調不良を感じ取っており、そう遠くない内に死ぬであろう事を理解し部屋で一人窓の外をぼんやり眺めている日々が続いていた・・・
だが、そんな変わらない日々に唐突に変化が起こった。
‘バッ、トッ’
「・・・えっ!?」
いつものように外を眺めていると、窓の外にいきなり朱色のなにかが現れた。そしてその何かはその窓をいきなり開けて部屋に忍び込んできた。一連の流れる動作にただシオンが驚いて止まっていると、朱色の人らしき者が立ち上がりおもむろにシオンの前に歩いてきた。
「・・・成程。随分弱っているようだな」
近付いてきた人物はシオンの顔を見るなり、何やら懐に手をやる。すると懐から出てきたのは植物の種で、何故かいきなり発芽しだし立派な植物に瞬く間に変貌した。
「煎じてやる。これを飲め」
「・・・は?あなたはいきなりなんなんですか?」
導師である自分になんと不遜な、そういった気持ちを含ませシオンの言葉は不快感に満ちた物になる。
「あぁ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は蔵馬。アリエッタに頼まれてお前の様子を見に来た」
「アリエッタ!?」
だが一転シオンはアリエッタと聞き、動揺を露にする。
「アリエッタはお前の部屋に近づけられないように監視されているとアリエッタから聞いた。だから代わりに俺がお前の様子を見に来た」
「アリエッタが・・・って・・・あなたは何をしているんですか?」
「見れば分かるだろう。薬を煎じている。丸呑みでも効果は変わらんがな」
ゴリゴリ音をたて、丸薬状に出来上がった塊を何故か蔵馬が取り出したすり鉢から持ち上げるとシオンにそれを手渡す。
「どういう事ですか?薬などと?あなたは医者・・・ではなさそうですけど・・・」
渡された丸薬を受け取らず、シオンは蔵馬に警戒心を持って質問をする。だがシオンの待っていた答えとは更に別の答えにシオンは驚かざるを得なくなる。
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