宗教の穴と行く先

・・・ここで出てきたイオンとは元々コノハ達がレプリカとして造られる事になった元である被験者のイオンの死から、最も能力的に被験者のイオンに近い存在として造られ祭り上げられるということになったコノハ達の兄弟とも呼べる存在である。

そんなイオンであるが、表面上は何も知らないフリはしているがコノハが影から姿を見せて交流していることからコノハ達の事は知っている上、マルクトへの亡命も共にコノハ達とすることを決意しているのである。その後のダアトがイオンがいなくなればどうなるかということは承知の上でだ。

これに関してはイオン自身は穏やかな性格こそはしているが、コノハ達がヴァン達の計画を潰すことと預言が詠まれる環境を覆すこと・・・そしてマルクトに亡命をすることに決めた二人やその兄弟達と暮らしたいと思ってに加えて、ダアトで導師として活動することに嫌気がさしていると言ったのだ。

これはコノハが接触するまでは自分が『導師イオン』として生きる以外に道がないと自分につけられたアニスという護衛を兼ねたスパイの存在から考えていたが、接触をしてからはそんな風に生きる以外の道があるなら・・・と考えていったことからである。それとコノハ達と話をする中でそう考えたことについて話をすると、もう被験者は死んでいるんだし自分達の都合のために身代わりにしてきたヴァンやモース達の意志なんて気にせず、『導師イオン』の死を事実にして裏で生きていけばいい・・・と言ったことでイオンの意志は固まったのだ。別に自分の考えで生きていいのだと。

故に今のイオンにはもうダアトに関しての心残りなど全くないし、アニスがスパイをしなければならない要因となったモースを片付ける事が出来れば後はどうでもいいと思っている。とは言えその要因にはアニスの両親も関わっているのだがその二人自身が過ちに思い至らなければどうしようもないことに加え、アニス本人がそんな二人から離れることを選択出来ないだろうことからもうそこまでやれば後は勝手だというように納得してもらったのである。下手に情けからアニスを両親から切り離して自分達と共に暮らすようになどとしたところで、故あれば裏切る理由持ちのアニスがいればダアトや両親の苦境を救うために行動しかねないという懸念をコノハが話したことでだ。






「・・・しかしローレライ教団の中身というか、上層部を含めた面々がこれだけバラバラだとはな。改革派と保守派で対立していることは知ってはいたが、お前達から話を聞くまではここまでだとは思っていなかったぞ」
「宗教っていうか預言があるからこその磐石の体制をユリアシティに関係する奴らが信じて疑ってなかったこと・・・それが誤算どころかオールドラントが丸ごと例外なく滅びる道筋に至ると考えもしてなかったからだぞコレ。預言で犠牲になった人達がそれまで通りに預言を信じるのか、預言の名の元に集まったモノが全て正しいモノなのか、預言なら何でも許されるのか・・・そして預言が本当に繁栄のみをもたらすようなものなのか、ってな」
「だがそれを理解してないからヴァン達のような奴らが現れ、お前達のようにヴァン達も含めて反旗を翻す奴らも出てくるってわけか。こりゃマジにダアトとの縁切りは出来る限り早目に行わなきゃ後々で尾を引きそうだぜ」
ピオニーはそれでイオンから話題を変えてダアトの内部がガタガタな事についてを口にすると、預言の絶対性を疑わなかった代償だと返したコノハに愉快げな笑みを浮かべた。改めてダアトと関係を破棄する気持ちを固められたと。









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