足元の定まらぬ夢に意味はあるのか

「・・・シンク。ここ、長いこといる場所じゃないぞコレ」
「何言ってんのコノハ。始めから分かってた事じゃん」
・・・神託の盾のある部屋にて狐面を被った緑髪の少年がある紙を見ながら呆れたように漏らし、鳥の面を被った緑髪の少年がその後ろから当然だろうというように声をかけた。
「いや、それは俺も分かってるけど実際にあいつらの計画が達成された時のシミュレーションをしてみると、成功なんてビジョンが見えねぇんだコレ・・・」
「・・・具体的には?」
「色々問題はあるけど、まず言えることは食料に関してだコレ。あいつらの計画が成功したらって仮定したとして、外殻大地をレプリカの大地として復活させるって流れにするってことだけど・・・全ての外殻大地を崩落させたなら、まず問題になるのは食料だ。今現在食料のほとんどを作っているのはエンゲーブだけど、そこを落としたら食料が作られなくなるしエンゲーブをレプリカ大地として復活させるにしても、そこを管理したり作物を作ったりするための人員がいない・・・ディストにヴァンは情報の刷り込みをレプリカにさせればどうとでもなるとでも考えてるかもしれないけど、食料を作るなんて簡単に出来るもんじゃなんだコレ」
「・・・簡単じゃない?」
「食料を作るにはそれだけの時間が必要だし、ヴァンの手勢の数はともかく生きている人が多ければ多いほどに食料もまた必要になる。エンゲーブの広さならどうにでもなるとかレプリカを使い捨てにして買い貯めてた食料で繋ぐにしたって、その時はレプリカの音素解離を防ぐためだとか障気の問題の為にもプラネットストームを止めるとかって風にするって話だけど・・・使い捨てにされるだろうレプリカのことが問題だってのもあるけど、そんな風にして使い捨てにしたらレプリカはもう造り出すことは出来ない。ならヴァン達がレプリカを守るためにもどうにかとかって考えると思うかコレ?」
「守るだとか優遇しようなんてまず考えないでしょ、あいつらが。でもそういった考えにならないなら食料をまともに作るための人材をみすみす失わせることになるし、ヴァン達も自分の食料に困ることになるって訳か・・・」
「そういうことだぞ、コレ・・・」
それでコノハと呼ばれた少年がまずはとばかりに食料についての問題を次々と上げていくその中身に、シンクと呼ばれた少年は盛大に呆れを浮かべた。ヴァンという人物の目指す未来において、食料を重要視して動いていないという事実を前にして。






・・・二人が所属する神託の盾という組織は表の顔と裏の顔があり、二人が所属しているのは裏の顔の部分である。だが二人は神託の盾に忠誠を誓っている訳でもないし、望んで所属している訳でもなかった。ただレプリカという身の上に加え、他に生きる道が無かったことから・・・コノハはともかくとしてもシンクの立場を考え、所属をしているに過ぎない。

そんな二人であるからこそ裏の顔である居場所を気に入っていないと同時に、その裏の顔のまとめ役であるヴァンに対してもまたいい気持ちを抱いてはいなかった。元々を言うなら二人やその兄弟が生まれたのはヴァンが原因であり、理不尽な理由の物だからだ。

ただそれでも二人は今はまだ生きていく為に神託の盾にいざるを得ない訳だが、別に忠誠心はなくともはっきり反旗を翻していない二人をヴァンは自分の側の味方だと言うように扱ってきて自分の計画を明かしたのだが・・・その計画の粗末さにコノハは呆れ返ったのである。様々に見て穴だらけな部分が見えた為に。









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