復讐するは我のみあらず

「・・・そんなことを言われるとは思っていなかったと言うのが分かる反応ですが、そもそも誰かが起こした行動への周りの評価と言うのは絶対的にこうだと決め付けられる物ではありません・・・例えば絵画の評価でも描いた当時は大したことない絵だと言われても、年月を経れば当時の天才が描いた絵の貴重な一枚だと見られて評価が覆えるようなことは多々あります。そして当時からすれば天才画家だと評価されても後々に歴史を解明することにより、モチーフや絵の描きかたを盗んだことによりこの絵は描かれたのだと評判を落とすような逆のパターンも存在しています・・・絵を描きその絵が残っているという結果がありますが、どちらのパターンでも絵を描いたという事実自体は否定出来ません。ですがその絵にどういった意味を見出だすかに歴史的にこういうことがあったから価値があるとかないとか決めるのは、当事者が決めることではありませんよ」
「・・・つまり、何が言いたいんだよ・・・?」
「少しズレているように思うかもしれませんが、所詮周りの評価や推測など時代であったり見る人によって変わる流動的な物だということですよ。今はあってもなくても特に誰にも被害がない偉人の絵の事を例えに挙げましたが、復讐という物は規模が大きければ大きいほどに時代や人の意見も違ってきます・・・この辺りは流石にバチカルにダアトに表沙汰にはなっていないとはいえ、ユリアシティまで破壊したスカーのことを間違っても後世が善人だと伝えるようなことはしないでしょう。まぁ本人は覚悟の上でそうしていますが、それでも彼の身の上や処遇などから言葉が届くことはなくとも同情の声もないとは限らないでしょうけれどね・・・ですが初めからそういった同情を始めとして復讐に関する事は正しく、誰もが誰もではないにしても間違いではないといったように言われることを望むのはおかしいと言わざるを得ないんですよ。本来復讐とは相手に対して人の道に背いてどのような形ででも仇を報いる行動であるはずなのに、道に背いていることだったり相手側に被害を引き起こしたことから全く目を背けて自分の気持ちに同調するのが正しい・・・といった考えになるのはね」
「!!?」
・・・ここに来てディストから出てきた例え混じりの話とその中身に、ガイは取り繕うことも出来ずに最大限の衝撃を受けた。復讐が正しいものと見られることばかりではないという根拠も交えられたことに。
「まぁどういう風に復讐の後の事を考えるかだったりこういう風に復讐の大義名分はあるんだといったように見せることもやり方ではありますが、最初から復讐なら誰もが無条件でそうするのが認められるなどというのは夢想でしかありません。と言うよりそういった考えなしで復讐をしてそうなったとしても、それはあくまでタイミングが良かっただけという見方になるでしょう。実際にスカーはタイミングを計った上でこうして行動を起こしたから、こういった事になった訳ですからね」
「・・・タイミングを計ったって・・・」
「彼がヴァンから見捨てられた時に然程時間を空けずに今回のような事を起こしたとしたなら、早目にキムラスカやダアトは機能不全に陥りヴァン達もいなくなって早々と彼の復讐を果たせたことでしょう。ですがあまりにも早すぎた場合の懸念としてキムラスカが国力や上層部を立て直した上で、預言通りになるきっかけの何らかが起きてしまい全てが預言の通りになり止まらなくなる・・・といった事が有り得たんですよ」
「「「「っ!?」」」」
そして更にディストがスカーが考えを持った行動をしていたのだとその理由を口にするが、その中身にガイだけでなく周りの面々も驚愕の表情を浮かべた。今のこんな状況を考えれば時間が経っても預言のような戦争にならないという気持ちになっていたのが、そうなる可能性があったとの発言に。









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