復讐するは我のみあらず

「・・・では貴方の言葉が正しければ、スカーは謡将達を殺しに行ったと?」
「えぇ。そして一応という形になりますが、彼が勝った場合はそれで彼の復讐は終わりになり以降は彼の手による被害は無くなるでしょう。むしろ以降は彼に手を出さなかったり、預言通りにするようにといった宣伝活動をしなければ無意味な人死には出ないでしょうね」
「・・・一応の復讐の完遂、ですか・・・それは間違いないのですか?」
「えぇ。雌伏の重要性を認知したとは言え彼は元々意味のない嘘をつくようなタイプではありませんし、ヴァンのように世界を滅ぼしてまでなんて大それた考えは元々持っていませんでしたから、ヴァンと袂を分かってからはなおのことそうする理由もありませんからね」
「っ・・・!」
その中でジェイドは気を取り直して慎重に先を促すとディストはスカーにヴァンと協力する理由も仲良くする理由もないといったように返すのだが、その言葉にティアがビクリと体を震わせる。
「・・・そう言えばティア、貴女は謡将が行動しようとしていた時の事を知っている節がありましたね・・・」
「それでしたら彼女に尋問するまでもなく私がお話ししますよ。もう黙っている理由がないのもありますが、彼女がヴァンを未だにいい人で慕うべき人物だと思っているようですので最終的な狙いが何かに預言の中身を聞けば少しは変わるでしょうからね」
そんなティアにジェイドは改めて前の事を目を細めながら詰め寄ろうとするが、ディストが自分が全部話すと切り出す。ティアを庇うのではなく、あくまでヴァンの本性の説明の為にと。


















・・・そうしてディストからヴァン達が最終的に何を目的にしているのかを聞いた。ホドで偶然見つけた第七譜石を見て預言通りにしていたら数十年後にはオールドラントが滅ぶことになり、ヴァンが預言通りにならないように変えることも含め現在の外殻大地を落とした上で外殻大地と人々のレプリカを作り、新たな大地と人類を作ることが最終的な目的だと。



「・・・そんな・・・兄さんが・・・」
「言っておきますが、第七譜石の中身を疑うのはともかくヴァンの目的に関しては嘘ではありませんよ。現に私は彼にフォミクリー技術を存分に研究させてくれる場と費用を出す待遇と引き換えに、その研究の技術を提供することにしたんです。まぁ・・・それもスカーにより私はもう諦めることにしたんですがね」
「・・・謡将達がスカーに殺される可能性の方が高いと見たからですか」
「えぇ、そうです。謡将達のアジトに関してはスカーは把握していますし、このダアトやバチカルの惨状を引き起こした攻撃手段を考えれば数の有利はさして意味を成さないと言うか、先制攻撃をされれば大半は抵抗すら出来ないままに終わるでしょう。そしてヴァンや六神将達も完全に不意を突かれてしまったなら彼に対抗出来るかは微妙でしょうね」
・・・それで話終わった所でティアが兄の最終的な目的に顔面蒼白になる中で、ディストはヴァンの目的に間違いはないと共にスカーの優位を疑っていないといったようにジェイドへと返す。
「ただ一応はどちらが勝つかは分かりませんが、貴殿方からすればスカーが勝った方が都合がいいでしょうね。色々と気に入らない方もいるかもしれませんが、特にマルクトから考えれば戦争が起こらないことや滅ぼされないということを踏まえればね」
「確かにそうですが・・・私以外は複雑極まりないといったような様子を隠せていないようですね」
「「「「・・・」」」」
その上で前置きをした後に利はマルクトにあると言うディストにジェイドは頷き返すが、ルーク達の方を見ると言葉通りに様々に表情を歪めていた。各々が各々、一方ならない事情を持っているために。









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