復讐するは我のみあらず

「続けますが、そういった事情で崩れ落ちたホドから命からがら逃げ出せた二人は共に預言に対する復讐を誓いあいました。ですが激情家と言うかヴァンのように雌伏をしている現状や周りの預言こそが大事だという姿勢に怒りを覚え、スカーは度々問題行動を起こしてきました。そしてそういった行動を重く見たヴァンはスカーを見捨てるように殺しても構わないと私にその身を預けたのです・・・ただとある偶然により拘束を逃れたスカーが私をこれからも殺さない代わりに自分を見逃せ、じゃなければ今すぐ殺す・・・と脅して来たことから、スカーを私は見逃したんですよ」
「なっ・・・じゃ、じゃあ貴方がそのスカーって人を逃がさなければこんなことは起きなかったんじゃない!」
「確かにそうですね」
「そうですねって、他人事みたいに・・・!」
「他人事みたい、ですか・・・実際に他人事みたいにしたいからこう言っているんです。少なくとももうスカーと関わるのはゴメンですし・・・何より、ようやく私は見逃されたのですからね・・・」
「・・・見逃された?と言うかディスト、貴方体が震えていますよ」
そうして話を簡潔ながらに続けて終わらせるディストにアニスが激昂した様子で詰め寄るが、大して気にしてないといった口調から徐々に顔を青ざめさせ体を震わせていく様子にジェイドはどうしたのかと問い掛ける。
「・・・今も思い出すと、体が震えるんです・・・スカーの怒りと殺意は、尋常ではないとかそんな程度の物ではなかった・・・私の元に預けられた時もそうでしたが、何より拘束を抜け出た時に私に向けてきたあの目と声・・・逃げ出したことをヴァン達に漏らしたなら俺がどのようなことになったとしても、貴様だけはどのようにしてでも殺してやると言われたあれは・・・っ!」
「「「「っ・・・」」」」
・・・そうして自分の体を抱き締めるようにしながら青い顔で心底から怯えた様子を浮かべ冷や汗を浮かべつつ震えるディストの姿に、ルーク達もまた戦慄したような表情を揃って浮かべた・・・数回程度しか会ってはいないがディストに抜けた所はあれども常に自信満々で死ぬことへの恐れなど全く持ち合わせていない姿を見てきたはずなのに、今はそんな様子が見る影もない程になっている様子がどれだけスカーに恐怖を抱いているのかをいくらか感じたために。
「・・・落ち着いてください、ディスト。その上で貴方が見逃されたという部分についてを聞きたいのですが・・・」
「っ・・・分かりました・・・そもそもその時の事を話す為にこのダアトまで来たんですが、貴殿方もここに来ている以上は貴殿方にも話を聞いていただいた方がいいでしょうからね・・・」
ジェイドはそんな様子に近付いて肩に手を置き柔らかい声で先を促すと、ディストも首を横に振りながら腕で顔の汗を拭いつつ気を取り直す。
「・・・今私はヴァンの所からスカーが逃げ出したと言いましたが、それ以降も彼は時折様子を見ては私に内密に接触を図ってきました。その用事は私が彼の事をバラしてないかということの確認もそうですが、ヴァン達の活動についてを把握するために・・・そしてここに来る前にも彼に会ったのですが、そこで彼に私をもう見逃す代わりにとダアトに話をしに行けと命令されたのです・・・これから俺はヴァン達を滅ぼしに行くから、今までのヴァン達の事実も交えてぶちまけてこいとね」
「なっ!?に、兄さん達も殺しに行くって言うの!?」
「えぇ・・・まぁ結果は見る前にさっさと行けと送り出されて逃げ出したから確認はしていませんが、ヴァン達が勝ったとしてもこのダアトやバチカルを見たなら分かるでしょうが、相当な被害が出ることはまず間違いないでしょうね」
「っ・・・!」
そこからディストはこのダアトに来た理由を話すのだが、ティアがその中身を受けて愕然としたような様子を浮かばせた。スカーが兄達を襲撃に行くと同時にどれだけの攻撃手段があるのかもだが、どう少なく見てもヴァン達が危険なのは間違いないという推測を聞いて。









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