復讐するは我のみあらず

・・・バチカルに来て最早上層部に足を踏み入れることすら出来ない現状を見てしまえば、嫌でもガイも理解してしまった。あれだけボロボロに打ち崩されてしまえば、当然ガレキに埋もれる形になったか起きた爆発と共に爆ぜただろう者達が万一にも生きている筈もない・・・つまりは復讐相手がもういないのだということになると。

その上で自分の協力者であるペールが巻き込まれたという点に関しては思うところはあるが、それでも殺したいと心から思っていた相手がいなくなったことに関しては嬉しいと思う部分もまた確かに存在はしている・・・だが二人の怒りの姿を目の当たりにしたガイは、ひた隠しにしてきた自分の怒りがどこか二人と違って不自然というか違和感を自身で感じてしまった上で、精神的に多大な影響を受けてしまっていた・・・






「・・・それに、どうすればいいんだ・・・アッシュはまだ生きているし、ルークもまだいる・・・せめて自分の分だけでもだったり完全にと復讐をするんなら、二人にも死んでもらった方がいいんだろうが・・・今二人をどちらかでも殺せば、確実にナタリアのあの目は俺に向く・・・そう考えると・・・」
そうしてガイは更に考えを深めるのだが、脳裏に浮かぶナタリアの姿にたまらず身体を震わせ恐れるように声を漏らしていた。自分のもしもの時を思い。






・・・一応と言うかファブレという復讐の対象となる家の人間は完全に滅びてはいないし、そもそも一族郎党全てをファブレにより失わされたガイは同じように復讐をする時は一族郎党全てを殺して回ろうと決めていた。故に現在本物と偽物という立場にあるとは言え、ルークとアッシュの二人はその対象ということになる。自身に芽生えた考えであったりから迷いがあるとは言えだ。

だがバチカルでの二人の姿・・・特にナタリアの怒りに燃える姿とファブレとの関係性を見てきたガイは、ルークは今なら最悪殺されてもまだどうにか怒らないかもしれないにしても、アッシュを殺したなら確実に自分にあの目と弓を向けてくると確信して・・・恐怖を感じていた。自分に対して復讐を仕掛けてくることに対して。

・・・ガイも様々な経験を経ていることから、人を殺すことには慣れているし恨みを向けられることにも慣れている。だが復讐をしようとすることばかりを考えて、全く考えていなかったのだ・・・自分がファブレを滅ぼした際にどのようにナタリアもだがその周囲に見られるかに、どう思われるかを。

ガイとしてはナタリアは復讐の対象にはなっていないし、なんなら立場の違いがあるとは言えそれなりに仲のいい関係を築けていたと思っている。そんなナタリアと憎まれ殺しあうような関係性になりたくないとガイは思っているのだが、そもそもそんな風に憎まれる訳がないと考えていた・・・ファブレに滅ぼされたガルディオスがファブレを滅ぼし返した所で、誰もが当然の事だと見るだろうからと。

だがナタリアの姿を見てしまった後でそんな考えが絶対に有り得ない物であることに気付かされた上で、大いに恐れを抱いてしまった。もしアッシュを殺してしまったと知ったなら確実にガイを殺しにかかりに来ることは目に見えていて、ファブレを滅ぼした先に見据えていたガルディオス復興など今の状態も併せて考えてみれば、面の皮を厚くして平然とマルクトの貴族として立てるか・・・そう考えるとガイは恐ろしくてたまらなかった。様々な面から見て自分が置かれる立場がどれだけキツい物かが、全てとは言わずとも感じられてしまった為に。









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