善意が事態を好転するとは限らない

「医療に携わる者としてというのは先程に言ったような譜術さえ使えば治ると言ったような考えをしていたことだ。確かに譜術は便利で即効性はあるが、だからと言って病気に障気障害のような症状全てにまで効果はない。と言うよりそこまで譜術に万能性があるのであれば、医者と言う職に就く者の多数が職を失うことになる・・・第七音譜術士が譜術を使えばそれでいいなどという見られ方をされれば、それまでになるからだ」
「・・・ですが現実はそうではなく、先程のようなことがあるからこそ貴方のような医者と言う存在があるということですか・・・」
「手前味噌な言い方に聞こえるかもしれませんが、そうなります。それに人を治療するという事にはその規模がどれだけのものかに限らず、大なり小なり責任があります。かくいう私も誰でもどんな症状でも治せるなどとは言えませんが、だからこそ冷静に周囲の状況も見て人々の状態を見極める必要があります・・・確かにナタリア様には第七音譜術士として重傷の怪我人の治療であったりを行ってきた経験はあるのでしょうが、それはあくまでも怪我人相手の事・・・今回は私が早目に駆け付ける事が出来たが、下手に効かぬなら効くまでと譜術を用い続けていたならあの人は死に至っていた可能性は決して否定は出来なかっただろう」
「「っ!!」」
まず医療に携わる者としていかな心構えが必要かもそうだが、いかにナタリアの行動のもしもが危なかったのか・・・トキが語るその危うさにイオンもそうだが、ナタリアも大きく体をビクリと揺らしてしまった。先程の行動が人の命を救うどころか奪いかねなかったのだということに。
「・・・生兵法というものは、それだけ危険だということです。そして人をまとめる者として人を連れてくることを選ばず、自分がそこに行きたいということから行動を起こした・・・兄であるラオウはあの通り、比類なき力を携えている。しかしそれでも自らの力のみで行えることの限界と言うものをよく知り、軍を率いて行動している。人々を助けるためには何が最善かを考えてだ・・・ナタリア様とラオウはアクゼリュスの人々を救いたいという気持ちは変わりはないだろう。しかし失礼ながら公私をハッキリとさせるどころか、公私混同で物事を考え自分の都合を優先させ一人で動いてきたナタリア様は、人をまとめる立場の人間としてはよろしくない行動を取ったと言わざるを得ません」
「っ!・・・耳に痛いですね・・・僕も自分が行きたいからということで、アクゼリュスまで付いてきましたから・・・」
「そう理解出来るのでしたらまだよろしいですが、肝心のナタリア様はどう考えておられるのですか?」
「っ!・・・わ、私は・・・私は、間違っていたと言うのですか・・・!?」
「・・・少し時間が必要なようだな、これは」
それでトキは続けざまにラオウを引き合いに出しつついかに人をまとめる者としての自覚がないかを告げると、イオンはたまらず苦い顔を浮かべるがナタリアは現実逃避というか間違ってないと言われたいというように涙を浮かべながら言葉を口にしていき、トキは少し呆れ気味にもう無理だと漏らす。これ以上ナタリアにとって酷な事を言うのは。









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