善意が事態を好転するとは限らない

「・・・どうやら貴女も自分が行ったことに関してを色々と自覚出来たようだが、こうして親善大使一行に付いてきた事に関してをインゴベルト陛下が貴女を無理にでも止めようとしなかったのは、預言の事を説明することなしに貴女を止めることの難しさもそうだが何より預言の中身を他の者にぶちまけて事を台無しにしかねないという危険性を考えて・・・だったのだろう」
「っ!?・・・で、ではお父様は・・・私がアクゼリュスで死んでも構わないから、私を止めなかったと貴方はおっしゃるのですか・・・!?」
「信じたくないというなら信じたくないでも構わないだろう。だが大義の為に犠牲をいとわない選択をする者は存在する。ましてやその預言はキムラスカの今後の命運を大きく左右する物だ・・・王女がいなくなってもキムラスカが繁栄するならと、その為に諫言を送る者がいてそう判断したということだろう」
「・・・そう諫言をしたのがモースということですか」
「まずそうだろうが、最終的に判断を下したのはインゴベルト陛下だ。そうでなければナタリア様はここに来る前のどこかで止められていただろうからな」
「っ!」
そんなナタリアの様子にいかにインゴベルト達が考えたのかの中身を口にしていくトキに、ジェイドがモースの言葉もあってかという声にあくまでも決断を下したのはインゴベルトだと強調するとナタリアは青ざめた表情を浮かべて息を詰まらせた。
「・・・これらの事について預言が絡んできたこととその中身に関しては置いておくにしても、こうして貴女がここに来れてしまった事はインゴベルト陛下を始めとした方々の言葉をことごとく貴女が無視したからこその結果だ。もし預言や戦争といった問題が無くてアクゼリュスの救援が無事になったとしても、その後に貴女がインゴベルト陛下達に誉められていたとは私には思えぬがね」
「っ!な、何故そんなこと・・・」
「先程言ったことと同じような事になるが、単純な話として貴女が自分が行った方がより良い結果になったではないかと自信満々でも控えめにでも言えば、陛下達の判断や顔に泥を塗ることになるからだよ・・・王女の勝手な判断は英断と人々に見られることになり、インゴベルト陛下以下の行くなと言った面々の判断は誤った物だと見られることになる・・・そんな風な事になってインゴベルト陛下達が心の底から自分達が間違っていたと頭を下げて貴女に謝るという姿を見た時、貴女は私が正しかっただろうと陛下達に心に曇りの一点もなく胸を張って言えるかな?」
「っ!?・・・い、言えませんわ・・・わ、私がお父様達の名誉を傷付けたというのにそのような事など・・・」
「そうだ・・・確かに時として上を諌めるため、勇気を持って諫言をすることも必要になる時はあるだろう。だが貴女が取った行動は諫言などではなく、単に自分がこうしたいというのに父親が聞いてくれなかったから勝手に行動するというだけのワガママでしかなかった。そんな行動で出した結果を心の底から忌憚なく誉めることが出来るような者など、そうそういるはずなどないのだよ」
「・・・っ!」
それで預言の事なしでもいかにナタリアの行動がいかに問題であり独り善がりであるかを告げていくトキに、反論の力が失われているのもあってナタリアは言葉を詰まらせつつ答えるか答えを返せすら出来なかった。いかにインゴベルト達の立場から見ればナタリアが勝手すぎる行動を取ってきたのか・・・それらが確かな理屈も添えられて口にされてきた為に。









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