善意が事態を好転するとは限らない

「・・・で、でもこの事ってどうするんですか大佐ぁ・・・話を聞くとこのアクゼリュスはルークの力で消滅して、戦争が始まるって事だって話ですけど・・・」
「そ、そんなこと有り得る筈がありませんわ!お父様がそんなことをするなんて・・・」
「その証拠に関しては後で謡将の元にいるラオウの元に行って、彼に自白してもらう。その際に貴殿方にとって信じがたいことが起きるだろうが、それが何よりの真実になるだろう」
「自白、ですか・・・無理矢理それを口にさせるだけでは信憑性は薄いですが、それでもキムラスカ兵を殺したという事実がある辺りどう考えても良からぬことがあることは確かでしょう・・・少なくとも今の時点ではナタリアのように楽観的に物事を判断することは出来ませんね」
「なっ・・・!?」
「あ~・・・それは否定出来ないですね~・・・」
それでアニスが今後の事を聞いてきてナタリアが慌ててインゴベルトの弁護に声を大きくするが、トキとジェイドの返しに二人ともに否定を返せなかった。特にジェイドの言葉は決して安穏と出来る物ではないと二人も感じた為に。
「・・・取りあえず自白させるということに関してはこの後に置いておきましょう。その件に関してはこちらで話すことではなく、場を移してからの方がいいでしょうからね。ですから何か別の話があるなら、それにした方がいいでしょうが・・・」
「だ、だったら先程の話について聞かせていただきますわ!あそこで譜術を使って苦しんだ訳とは何なのですか!?」
そんなヴァンについての話題を一先ずジェイドは変えようとする言葉に、ナタリアはすぐに先程の住民の様子についてをトキに向けて問い質してきた。どういう理由なのかと。
「・・・簡単な理屈で話をさせてもらうが、そもそも譜術を使えば障気を無効化出来るならアクゼリュスの住民はある程度は元気な状態でここにいられただろう。このアクゼリュスもかなりの住民がいて、その中に第七音譜術士が全く誰一人いないなどという訳もなかっただろうからね・・・だが現実はそのように甘くはないからこそ先程のような光景が広がっていたわけだが、ならば何故あんな事になっていたのか見当はつくかな?」
「えっ・・・そ、それは・・・」
だがトキがそんな熱さとは対照的に何故第七音譜術士がいてもこうなったのかと冷静に問い掛けると、途端にナタリアは口ごもる。確かな理論から語られる第七音譜術士がいてもこうなったことへの答えなど、ナタリアは考えてすらいなかったために。
「先に言っておくが第七音譜術士の精神力が持たなかっただとかそういった単純な話ではない・・・ここまで言って先程の反応を思い返した上で考えれば、答えについては多少なりに想像はつくのではないかな?」
「ま、まどろっこしいことを言わないで早く答えてくださいまし!その理由とやらを!」
「待ってください、ナタリア・・・もしや譜術と障気は、音素が結び付きやすいとでも言うのですか?」
「少し違うな・・・音素が結び付きやすいというのではなく、そもそも障気は汚染された第七音素だということだそうだ。そして障気にまみれた土地で第七音素を用いた譜術を用いれば、清浄な第七音素など望めるはずもなく障気まみれの譜術になり結果として更に重体の人の中に送り込む事になる・・・という結果に繋がるのだよ」
「「「「っ!!」」」」
トキはそのままヒントを与えつつ話を進めナタリアがもどかしいと早く話をするようにと言い、ジェイドがまさかといった声を漏らしたがそこから返ってきたトキの答えに周りの面々も共に驚愕の様子を浮かべた・・・第七音素と障気。この二つの関連性を口にされた上での答えがあまりにも衝撃的であったことに。









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