善意が事態を好転するとは限らない

・・・そこからトキは簡潔ながらも話を進めた。今回のこのアクゼリュス行きは預言に詠まれた物でこそあるが、その預言の中身は聖なる焔の光が炭鉱の街と共に消滅してキムラスカとマルクトの間で戦争が起きるから、その預言に沿わせると決めたキムラスカがルーク達を派遣すると共に、ヴァンが確実にその通りに事を進めるための実行者としてモースに派遣されたのだと。



「・・・せ、師匠が・・・俺に、そんなことを・・・!?」
「嘘だと言いたいかもしれぬが、謡将と共に派遣されてきたキムラスカの兵達は少し離れた所で皆殺しにされていた。信じたくないと言うなら後でその現場に案内してもいいが、あまりオススメはしない。耐性の無いものがあの光景を見れば卒倒しかねん光景だからな」
「っ・・・!」
「お、おいルーク・・・!」
・・・そんな話を聞き終わりルークが顔から血の気の全てを引かせたよう青白い顔色になっていて、トキの証拠はあるが見ない方がいいと言った言葉に膝から力が抜けたように地面にへたりこみガイは驚き声をかけた。
「・・・どうやらルークは信じたくないと思いつつ、嫌でも信じなければならないと感じたのでしょうね。キムラスカ兵が殺されていたと言うところに、貴方の話が冗談や大袈裟でもない物だと感じて」
「そうだろうが・・・そんな謡将の行動を知っていただろう存在がそこにいる」
「っ・・・わ、私・・・!?」
「・・・むしろ貴女以外に誰がいると言うのかな?」
そんなルークに多少同情めいた視線を向けながら言葉を口にしていたが、トキからの言葉でルーク以外の他の面々も含めてティアに一斉に視線が集まる・・・こうなることを知っていたのかという疑念の視線が。
「ティア、貴方まさか預言の中身を知っていて・・・」
「ちっ、違いますイオン様!むしろ逆です!私は兄さんがこの世界を壊すつもりでいるのだと聞いて・・・!」
「ほう・・・逆に、世界を壊すつもりですか」
「・・・っ!」
それでイオンがまさか向こう側なのかと言ったような疑いを向けてきたことに慌てて弁解するが、そこでジェイドがその言葉に目を光らせた事にティアはハッとした。言うつもりのないことを口を滑らせてしまったと言うように。
「・・・彼女については一先ず後にしておくが、我々としてはそのような事態にしたくない。そう思ったからこう言った行動に出た訳だ・・・預言通りの戦争にしないこともそうだが、アクゼリュスの人々を救助するためにも」
「・・・それは貴方に拳王軍の長であるあの人物もそうですが、ケセドニアの代表であるアスター氏の考えでもあるのですか?」
「あぁ、その通りだ。ただアスター氏は我々の考えに賛同してスポンサーになってくれているというくらいに見てほしい。導師がいる場でこのようなことを言うのはあまりよろしくはないだろうが、あの人が表に立つことはダアトとの関係を考えればあまり望ましい事ではないのでね」
「・・・確かにあの方の性質上、表立って行動するような事はよろしくはないのでしょうが・・・よろしいのですか?ここにはイオン様もいらっしゃるのですが・・・」
「っ・・・」
そんなティアについてをさておきと話を自分達がどういったように動いているのかを話すトキに、ジェイドがイオンの方を見ながらどうかと言うとその当人はそっと不安げに体を揺らす。
「何、これでも人を見る目はあるつもりだ。こんな状況で何も知らないままに導師が浅慮な行動を取ることはないだろう」
「っ・・・!」
「・・・確かに今のイオン様を見る限りではどうしようかと迷われているように見えますね」
しかしそんな姿に心配はいらないと微笑を浮かべるトキに今度はビクリと体を震わせるイオンに、ジェイドも納得する。イオンは言うことはしないというか、言えない状態にある・・・と言うように。









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