善意が事態を好転するとは限らない

「ど、どういうことなのですか・・・譜術を使ったからこの方が苦しんだと言うのは・・・!?」
「済まないが、説明は後にさせてもらう・・・出てきてくれ!」
‘ザッ!’
「なっ・・・なんだ、こいつら・・・!?」
そんな中でナタリアがいち早く何故かとすがるように理由を問いを向けるが、トキが合図の声と手を上げると周りにいきなり大勢の男達が現れたことにルーク達は驚きと共に警戒の体勢に入る。
「心配はいらない。この者達は拳王軍・・・ケセドニアの所属の者達だ」
「拳王軍・・・話は聞いていましたが、何故そのような方々が・・・」
トキはすぐに警戒の必要はないと拳王軍であることを微笑を浮かべつつ言うと、一先ず警戒を解きながらもどうしてここに来たのかとジェイドは口にする。
「このアクゼリュスの救援とまた別にもう一つやることがあるからだが・・・来たか、ラオウ」
「ラオウ・・・っ!?」
「なっ・・・せ、師匠・・・!?」
トキは冷静に答えつつ視線を別の方向に向ける・・・そしてその視線の先にいた人物によって一同は一斉に目を見開いた。何故ならヴァンより大柄なラオウと呼ばれた男により、荷物を運ぶように小脇に抱えられ気絶しているように見受けられたからだ。
「貴方、兄さんに何をしたのよ!?」
「・・・黙れ、小娘」
「「「「っ・・・!?」」」」
その中で一人ティアが今すぐにでも飛び掛からんかのように声を向けるが、そんな声とは真逆の重く低い・・・それでいて圧倒的な実力差をいやが上にでも感じさせるプレッシャーの含まれた返しの言葉と視線に、他の面々も一斉に身を引いてしまった。
「・・・済まぬがラオウ、貴方は少し下がっていてくれ。彼らとの話は私がするから、兵達に指示を与える立場に戻ってほしい」
「良かろう。では俺は行くぞ」
一同が静止してしまう中で一人平然と話し掛けるトキに、ラオウは頷きそのまま場を後にしていく。
「・・・ラオウとは、拳王軍のトップだと認知していますが・・・」
「あぁ。そして私の兄でもある」
「はっ!?兄上だって!?嘘だろ、全く似てるように思えねぇぞ!」
「はは、それは良く言われるさ」
そしてラオウが去っていった後にジェイドが確認の声を向けると、兄と返したトキにルークを代表として驚愕の様子を一同は浮かべ慣れていると微笑で返す。
「・・・まぁそれはともかく、我々もこの場を離れよう。ここは拳王軍の者達が頑張って住民達を避難するようにしてくれる」
「な、なら私達も・・・」
「貴女達には私の方から少し話がある。今後の貴女達に関わることでもあるし、特に貴女には色々と話をしなければならない事がある・・・先程の譜術の件も含めてだ」
「そんなまどろっこしいこと・・・!」
「ここは素直に従いましょう、ナタリア。私としては何故拳王として名高いラオウと呼ばれる人物が何故謡将をあのようにしたのかも気になっています・・・その事についても話していただけますよね?」
「えぇ」
「・・・分かりました、付いていきますわ」
「他の方々は反論はありませんか?・・・では行きましょう」
そんな笑顔をすぐに引き締め場を離れて話をしようと切り出すトキにナタリアは反対したそうにしたが、ジェイドの言葉から仕方無いと引いて他の面々もトキの確認に反論することなく場を離れるように動き出す。トキを先頭として。









・・・そしてトキを先頭にした一行が着いたのは拳王軍が待機していて、そこに急ぎで設置した大きなテントの中であった。









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