善意が事態を好転するとは限らない

・・・マルクトより願われた和平とアクゼリュスの住民の救助の要請。その要請にキムラスカは望みに応じた上で救助の住民の人員及び、親善大使一行を送ることにした。

しかしその流れの中で様々な思惑が絡み合い、予想外な事態が起きていた。そしてその中に預言にすら詠まれず、行動を起こす男達がいた・・・









「・・・これは・・・」
「酷いわね・・・話には聞いてはいたけれど・・・」
・・・親善大使としてアクゼリュスに来たルーク一行。鉱山の街として栄えている筈のこの街の光景を前に、一行は表情を暗くする。普通とはあまりにもかけ離れた壮絶な光景に。
「・・・て言うか、師匠はどこなんだ?ここに他の兵とかと一緒に先に来て救助活動してるみたいな感じじゃなかったのか?あいつの話だと」
「あいつ・・・あぁ、確かにそう言っていましたが兵も謡将もどちらも姿が見えませんね」
そんな中でルークは辺りを見渡しながら聞いていたのと違うといったように口にし、ジェイドも同じように辺りを見渡しながら確かにと頷く。あいつと呼ばれた人物の事を思い出しながら。
「そんなことより早く住民の皆様を救助しないといけませんわ!今も苦しむ人々がこうして倒れているのですから!」
「あっ、ナタリア・・・行っちまった・・・」
「・・・彼女はともかくとして、貴方は謡将を是が非でも探しに行かないのですか?」
「・・・なんつーか、あいつの言葉で冷静っつーか一周回って頭が冷えちまったんだよ。ケセドニアで別れる前に言われた言葉でな」
「・・・そうですか。まぁあぁして暴走される方がもう一人増えるよりはいいですがね」
そんな二人の会話に怒りを浮かべながら義侠心で走り出すナタリアを止めれなかったルークにジェイドは話しかけ、そのあいつと呼ばれた人物からの影響を滲ませる答えに皮肉めかせた言葉を漏らす。その人物によってもたらされた影響により前より大分ルークが冷静な事と、ナタリアが暴走しているという対比に対しての呆れを含めて。
「・・・つーかどうする?一応師匠達を探してぇって気持ちがあるのは確かだけど、ナタリアを放っておいていいのか?」
「・・・まずはナタリアと話をしましょう。謡将達を探すにも住民を救助するにも、一応我々は一つの団体としてここに来ているのです。彼女が勝手に我々に付いて来た事はともかくとしても、あまり独断専行はよろしいことではありませんからね」
「・・・分かった。んじゃナタリアの所に行くか・・・」
それでルークがどうするかを聞いてジェイドが仕方無さそうにナタリアをまずと言ったことに、気乗りしないというように歩き出す。



「大丈夫ですか、しっかりしてください!今治療致しますわ!・・・ヒール!」
「っ・・・あっ、あぁぁぁっ・・・!」
「ど、どうしたのですか!?しっかりしてくださいまし!」
そうして少し離れた場所に倒れていた住民の元に駆け寄ったナタリアはすぐに膝だちになり譜術を使うのだが、光に包まれた後に力なく苦しげな声を上げる人の姿に途端に慌て出す。
「・・・どうしたんだよ、ナタリア!?」
「わ、分かりませんわ!譜術を使ったらいきなりこの方が苦しみ出しまして・・・!」
「・・・その苦しみは譜術を使って治療を行ったからだ」
「はっ!?・・・な、何でお前がここにいるんだよ・・・トキ!?」
そこにルーク達が来てどういうことかと雰囲気が慌ただしくなるのだが、別方向から説明をしながら現れて来たトキという男にルークを始めとして一同は驚愕の表情を浮かべた・・・ルークが言っていたあいつとはトキのことであり、同時にこの場にいない筈の人物の筈だった為に。









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