兄と姉への想いと興味のない信仰

「・・・まぁいい、もう済んだことだ。どうせ妹の方はもうカンタビレの元に戻ると言うし、姉の方はアクゼリュス行きで死ぬ身だからな」
しかしそんな風に言いつつも唐突にモースは別にいいかといったように吐き捨てる・・・所詮は人の事など使えるか使えないかだとか、自身に益があるかどうかでしか判断しないモースにとっては多少使えるくらいではレオナは有象無象の一人程度にしかイメージがなかった・・・それだけのことであった。









「・・・随分と苦労したんだな、これまでの旅で」
「いえ、これも任務です」
・・・そんな風にヴァンとモースが姉妹についてを考える中、レオナはバチカルの下層にある酒場の中でラルフとクラークの二人とテーブルを囲みながら話をしていた。
「ま、お前ならそう言うだろうとは思っちゃいたが・・・兵士としてじゃなく、個人としてモースに会った感想はどうだった?」
「いきなりどうしたんですか、ラルフ?」
「聞いてみたかったんだよ。レオナはあれに会う前にダアトを離れちまったから、実際会ったらどうなのかってな」
「そう言えばそうでしたね・・・」
そんな中でテーブルに肘をつきながらラルフが口にした問い掛けとその意図に、クラークも納得する。確かに直接会話が出来る位置で話をしたことは無かっただろうと。
「・・・別に大したことはありません。むしろあのような人物を大多数の人々が敬う理由が分からないと思うくらいでした」
「おっ!中々言うじゃねぇか!」
「ラルフ・・・一応周りに気を使ってください。酒場で喧騒に包まれているとは言え、あまり聞かれていい中身ではないんですからね」
「おぉ、わりぃわりぃ」
レオナはそんな声に率直に答えてラルフは嬉しそうに大きく声を上げるが、クラークのなだめに笑いながら大して気にした様子のないよう返す。
「しかしレオナ、お前がそういうことを言うとは・・・」
「聞かれたから答えたまでです。それに実際に会って話した結果として、モースに敬意など持てなかった」
「敬意が持てない、か・・・ちなみにどんなことを言われた?」
「端的に言うならカンタビレの配下であることは気に食わないが、ルークを護衛すると判断してここまで来たことは誉めてやる。姉と違って少しはマシなようだな・・・といったことをやたら舐め回すような視線を向けながら言ってきました」
「・・・辛辣なこともそうだが、相変わらず上から目線が好きな男だ。師団長が嫌いだということを隠しもしなかっただけの事はある・・・」
ただクラークも先が気になると言ったように話を進めると、レオナからの淡々としながらも言葉尻として本気で嫌がっていたような答えに帽子に手を添えながら不快だと言ったような声を漏らす。
「しかしよぉ、そんな風に姉ちゃんの事を言われてムカつかなかったのか?謡将もそうだが、兄ちゃんに姉ちゃんなんだからよ」
「・・・全く気分が悪くならないかと言えば嘘になるかもしれないけれど、少なくとも兄さんはともかく姉さんに対してはそこまで嫌な気持ちはありません」
「何でだ?」
「姉さんが起こした事は嘘偽りのない事実ですから」
「・・・あ~、そういや俺らがお前に同行しろって言ったのは姉ちゃんの行動が理由だったな・・・」
ラルフはそこで兄弟についての気持ちを尋ねるのだが、レオナがティアに対してどこかトゲのある返しをしたことに何とも言いがたげに頭をかく。ラルフとしてもティアのやったことを聞いてはいるが、けして誉められる物ではないとは感じた為に。









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