兄と姉への想いと興味のない信仰

「・・・では私が正しいと思えないのは、何故だ?」
「姉さんが兄さんにそうした理由もそうだけど、その時のシチュエーションについてを聞いてないからよ」
「・・・シチュエーション?」
ただ気を取り直して自分についてを聞くヴァンだが、シチュエーションとの言葉にたまらず眉を寄せる。どういう意味か分からないと。
「姉さんの性格に考え方が昔とそこまで変わってないことはこれまでの旅で十分に理解はしたわ。そして兄さんに対しての想いが前から変わらないということも・・・そんな姉さんがあそこまで兄さんの事を敵視するにはそれなりの理由があることもそうだけれど、兄さんが言ったような勘違いがどういったシチュエーションから生まれたのかを私達は聞いていないし姉さんは言おうともしてくれなかった」
「それは・・・」
「そこについて言わない事が兄さんを正しいと言えない理由よ。そして姉さんは話をして誤解が少しは解けたみたいに感じてるようだけれど、あれだけの事をするからには姉さんは何らかの確信を得て行動したと思っている。姉さんの兄さんに対する想いの強さを考えれば、多少程度の何か大したことがないことをおぼろげ程度に知ったくらいでは何かを起こすことはないだろうからこそ、確信があるからの物だと」
「っ・・・」
そこからレオナが口にしたのはティアがヴァンを攻撃するだけの理由に状況があったから行動に踏み切ったという確信を抱いたとの物で、ヴァンはそっと息を呑んだ・・・ヴァンは決して口にこそしないが、レオナのその読みは間違いではないどころか正解以外の何物でもなかった為に。
「・・・兄さん。貴方が何をしているのかに姉さんが何を知ったのかは私には分からないし、その心当たりの場面についてを話すことはないのは分かる・・・それでも自分が間違っていないというなら、その証拠を出して。それが出来ないというなら、私は兄さんも姉さんもどちらも信用出来ないわ」
「・・・それは・・・誤解だと言っても、言葉だけでは信用出来ないというのか・・・」
「えぇ、そうよ」
「っ・・・」
そしてそんな物だからこそどちらも信用しないと言い切るレオナの断言に、ヴァンは自身もだがティアの擁護の言葉など出てこず黙るしかなかった。口八丁でレオナの心をどうにかすることなど出来ないと否応なしに分かったが為に。









・・・それでレオナがもう何もないなら行くと言ってその場を後にしていき、気を取り直して自分の目論見を進めたヴァンであったが、レオナの言葉はヴァンの中に大きな影を落として今も頭を悩ませる物となっていた。ただそれはレオナに文句があるという意味ではなく、その頭を悩ませる対象がティアになったことだ。



(・・・あの子が感情的になることも、私の事を好きでいてくれることも悪いことではないと思いたい・・・だがレオナとあぁして会話を交わした後だと、どうしても考えしまう・・・せめてもう少しどうにかして、あの子を導けなかった物かと・・・)
・・・ヴァンからすれば大事な妹二人を愛する気持ちに偽りは何一つないが、それでも出来の差という物を感じてしまえば嫌となってもティアに対する考えが浮かんでしまう。しかもその事を思い知らせたのは他ならぬもう一人の妹であるレオナなのだ。
自分がどうにか出来ていればティアはもう少しまともになったのではないか・・・そうヴァンは感じずにはいられなかった。レオナの揺るがぬ意思に鋭い感じかたを見て聞いたからこそ、そういうところをティアにも身に付けさせるようにした方が良かったのでないかと。









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