復讐を果たした先の末路

「この子はファブレが滅びてからしばらく時間が経つまでは外にも出られない程に弱りきってた・・・それこそ私達が一緒にいなかったら、自殺すら選びかねない程だったわ・・・!」
「そ、そこまで・・・」
「そして私達もこの子程じゃないにしても、ファブレという職場を無くした事で行き場を無くした・・・ナタリア様が私達を何とか拾ってくださったおかげで城のメイドとして復帰出来たけれど、貴方の行動で私達の全てが無茶苦茶になってしまった!許されることなら今ここで貴方を殺してしまいたいくらいよ!」
「っ!?・・・お、俺は・・・俺は・・・」
友達の恨み、自分の恨み・・・二つを盛大にぶつけ殺したいとまで言う女性に、ガイは最早視線を合わせることが出来ずにうつむき壊れたように声を上げるしか出来なくなった。
「・・・まだ色々言いたいことはあるかもしれませんが、もうこれで退出致しましょう。貴女方がガイを許せないと言う気持ちは分かりますが、ガイは数日後に処刑される身・・・それをマルクトの許可もなしに殺すような事をしてしまえば、マルクト側の不興を買うかもしれませんから」
「・・・はい、分かりました・・・行きましょう、二人とも・・・」
その姿を流石に見かねてナタリアが止めに入るが、最早ナタリアもガイの事を見放したようマルクト側に迷惑をかけないようにとの配慮を願う中身で止め、その言葉に頷いてから泣いていたメイドと止めていたメイドをなだめるようにしながら牢からナタリアと共に退出していく。



「・・・よう、どうだ気分は?」
「・・・政宗・・・」
・・・それでナタリア達と入れ替わりに入ってきた政宗の声に、数分も経ってないのに憔悴しきったような顔をガイは向ける。
「・・・人を呪わば穴二つって言葉の意味が理解出来たんじゃねぇか?自分が相手を恨むなら当然相手だって自分を恨むし、端から見てる奴でも見てて人を恨むことだってある。ましてやお前がやったことは復讐って行為を恨まれるかどうかなんざ考えずにやったんだ・・・その時点でお前は恨まれる側の人間に立っちまった。ファブレに復讐をするって決めたお前のような存在を自分自身で生み出したことでな」
「お・・・俺は・・・どう、すれば良かったんだ・・・政宗・・・?」
「さぁな。少なくとも言えることがあるなら、お前は中途半端だったってことだ・・・自分は間違ったことはしていないってどんな言い訳でも口にして正義だって言い張るか、もしくは復讐を果たしたなら自分も悪かったってガルディオスの名を出さず自殺なり自首なりしてたらこんな事態になんざなっちゃいなかった・・・だが中途半端に自分は悪くないし同情されるのは当然みたいな気持ちを持って、いいかっこをしようとしたことが今のお前の状況を招いた・・・徹底したheelにもheroにもなる覚悟もなかったお前じゃ、どうしようも出来なかっただろうよ」
「っ!・・・そん、な・・・」
政宗はそこからいかにガイの行動が考えなしの物であったかを語った上で覚悟が無かったことを口にすると、ガイは再びうつむいてしまう。もうどうしようもなかった、ハッキリ言われたその言葉に現実を突き付けられた為に。
「・・・もうお前に残ってるのはこの戦争の責任を取って死んでもらうって役割を負うことだけだ。それまでの間、精々考えてろ・・・自分がいかに浅はかだったかをな」
「・・・」
その姿に政宗は声をかけてから退出していくのだが、最早ガイには顔を上げる余裕など一片もなかった。何が正しくて何が悪かったのか、もう今のガイにはそんな判断が出来ない状態にまでなっていたために・・・


















・・・そして数日後、城の前でマルクトがキムラスカに出した要求を集まった人々に発表した後に・・・ガイは戦争の発端となった人物として、処刑されることとなった。

その際にナタリアもガイの事を知っていたこととキムラスカの民の中にもガイのことを知っているという言葉が出て、マルクトが仕掛けたことではなくガイがあくまで個人で仕掛けたことからの巻き添えに勘違いから戦争になったと聞いた民衆達から、次第にガイへの罵詈雑言が飛び出していった中での処刑となった。

・・・そして以降はマルクトの思うように事が進んでいくのだが、その影でガルディオスの従者がグランコクマの獄中で殉死したことを知る者は少ない・・・最早ガルディオスの名は復讐者として地に堕ちた物となったのに、敢えて従者としての矜持を貫いた者がいることは・・・









END









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