復讐を果たした先の末路

・・・そして数日後、場所は変わりマルクトの首都のグランコクマの皇帝のピオニーの私室は・・・重苦しい雰囲気で満たされていた。



「・・・まさか、ガイが生きていたとはな・・・」
「ただそれも・・・ファブレを滅ぼしたという最悪の結果をもたらしてくれましたが・・・」
「おかげでキムラスカから即刻の開戦宣言が綴られた手紙送られてきた・・・本来ならダアトを介してどうするか議論してからくるだろうが、ファブレが襲われた日付とこの手紙が送られてきた時間からしてそんな間などほぼ無いのは明白だ」
「となれば・・・ダアトが止めるようにと口を出したとしても、到底キムラスカは止まらないでしょうね・・・それほどにファブレを滅ぼされた怒りは大きい・・・」
「「「「・・・」」」」
政宗に小十郎にピオニーにジェイド・・・四人が顔を見合せ順々に声を上げるのだが、やはり事実を確認して各々表情を苦く歪める。マルクトからすればキムラスカは敵と呼んで差し支えなく戦争も有り得る間柄ではあるが、だからと言って全く予想していないきっかけによって戦争に突入するなど望んでいないし、ましてや用意も出来ていない為に。
「・・・こうして嘆いていても仕方無い。こうなったからには目の前の事を一つ一つ片付けねばならん。マルクトの存亡がかかっているのだから、対応を誤るわけにはいかんからな」
「ならまずどれについての対応にいきますか?」
「・・・まずはダアトからだ」
それでもピオニーは気をしっかり持ち行動をと切り出し、ジェイドがどれから行くのかを問うとダアトからと返す。
「奴らからすればキムラスカが勝手に戦争を行うという決断なぞ望んでいないだろうが、キムラスカが引く気を見せんとなれば流石に向こうもある程度は譲歩をするだろう。そして自分達の目的を果たすと共にある程度の修正のために奴らは確実に戦争に介入してくるのは目に見えているし、その為の大義名分はキムラスカに十分に備わっている・・・一方的に何の前触れもなく、ファブレがマルクトの人間に滅ぼされたのだからな」
「・・・そしてキムラスカとダアトは表向きにも同盟を組む、と言うわけですか・・・」
「あぁ。そしてそうなれば一部のキムラスカ憎しの過激派以外はダアトと敵対する事から、士気が下がることになるだろう。ただそれよりも実質的な問題になるのは・・・謡将率いる神託の盾の動きが分からなくなりかねないという所だ」
「謡将ですか・・・確かにそうですね」
ピオニーはダアトに対応をしなければならない理由を口にして行くが、その中で謡将という存在について口にすると小十郎も重く頷く。
「謡将達からしてもおそらくガイラルディアとやらの行動は想定外だっただろう。となれば謡将としても自分達の目的を前倒しないし、修正の為に動いてくることは十分に有り得る・・・だからこそとも言えるが政宗、後でかすがと小太郎に手紙を出すと共に佐助もダアトに向かわせろ。内容は・・・謡将率いる神託の盾優先で、出来るなら他の神託の盾も巻き込んでダアトを出港する船の破壊作業だ」
「船の破壊作業か・・・」
「そんなことは戦の習わしとしちゃ望ましくないというのは百も承知の上だ。だがダアトから神託の盾を出港させて戦争に参加される事もそうだが、後々謡将達の行方が分からなくなる方が余程厄介・・・それを阻止するためにも手っ取り早く確実な手段は陸地の遠い海上で船を沈ませる、だ。そうすればいくら謡将達が手練れ揃いとは言え、広い海の上ではどうしようもないだろう」
「・・・あんたはそうすることに後悔はねぇのか?そんなやり方をすることによ」
「・・・まともに戦って勝つことが出来るなら、それでもいいだろう。だが何もしなければダアトは間違いなくキムラスカに味方をし、マルクトが兵力もそうだが士気の面で窮地に陥るのは目に見えている・・・ならばこそ俺は選ぶ。例え歴史に暴君などと不名誉な事を記されようともマルクトを守るための最善の道をな」
「・・・All light。あんたの気持ちは分かった。後で猿飛達にそうするように伝えるさ」
「すまんな、政宗・・・」
それで謡将への警戒心を露にした上で対応策を口にしたピオニーに政宗は本意かと確認を向けるが、悪名を覚悟の上での考えと覚悟を見せて返すと政宗も微笑を浮かべて頷く。皇帝としての苦渋の決断をしたピオニーの気持ちを掬い上げる形で。









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