共通点は少なく違いは多い

「・・・フン、久しぶりにあいつと話したがあそこまで骨が抜けた奴になっていたとはな。あれでは自分達が何らかの裏を抱えているのは容易に分かるということを察されたことすら、ろくに考えてもいなかっただろう」
それで一人部屋に残っていたカンタビレはリグレットに対してあからさまに呆れた様子を浮かべる・・・ティアの態度はリグレット達の事が原因で、それを自分が悟らせた事に関して全く気付いていない体たらくに。
「ただそれがレオナの事に発端して分かるとは思わなかったがな・・・さて、どうするか・・・私はもうすぐここを出る身で、今更残りたいなどと言った所でモースがそうしてやるなどと言うわけはないからな・・・」
しかし何か大きな裏があるとは言っても自分は言葉を飾らずに言って、左遷されて遠くに飛ばされる身・・・カンタビレは自身が別に正義であるなどといった考えは持ってはいないが、それでも何かあると知ってしまった以上どうにかしたいとの考えが浮かんでしまった為に。
「・・・まぁいい、後でどうするかを考えるか。僻地に飛ばされはするが、どうせ左遷することがメインの目的で私達がどんな活動をしているかもだが、そこに誰がいるのかなど適当な報告をすればどうとでもなるだろうからな・・・!」
ただすぐにいい考えは浮かばないとしつつもカンタビレの表情はやる気に満ちた物に変わっていく・・・どうせモースを始めとした預言保守派に嫌われている身で、左遷された所で大したことない仕事に従事して腐っていく日々を過ごしていくとカンタビレ自身感じていた。だがそんな腐った日々にならないようにするためのきっかけが舞い降りてきたということが、カンタビレの心に火をつけたのだ・・・自分に何が出来るのか、それを考えさせる事柄に会ったことで・・・









「・・・二人の事を聞きに行っただけなのに、まさかあそこまでティアの事を言われるとは思わなかったが・・・どうするべきなのだ、私は・・・!?」
・・・一方でリグレットは自分の私室に戻ったのだが、話の中身に未だに惑っていた。自分がどうするべきなのかと。
「ティアが絶対に行動しないとは限らない・・・だが閣下を刺した事にカンタビレが見た限りでは、ティアは何かしらの行動を起こすと言う・・・私はそれを止めるよう動いて何かするのが閣下の為なのだろうが、そうするとなれば閣下の意向に沿わない結果になることになるのは目に見えているし・・・何より私も気分が良くない結果となるだろう・・・」
そうやって迷うのは不安を消すためにはティアをどうにか・・・平たく言えばティアを殺すのが手っ取り早いのだが、ヴァンの事に加えて自分の気持ちが落ち込むことになることを自覚していた。そうしたくないという気持ちが明確にあったために。
「・・・もしティアではなくレオナが閣下の事実を知ったのなら、どうなっていたのだろうな・・・あの娘の様子にカンタビレの話の感じでは、閣下になびくことはなく短絡的に動くこともなくカンタビレに報告辺りをしていたのかもな・・・」
ただそこでそもそもカンタビレの元を訪れた理由であるレオナについてを考え、ティアとは違う行動を取っていたのではと考える。
「・・・そう思えば閣下も何となく感じていたのだろう。ティアと違いレオナの事を話すのをあまり気が進んでいなかったのはその性格もあって、自分の事を肉親の情も抜いて判断するだろう事を・・・」
そして数日前に感じていたヴァンとのやり取りの違和感についてを思い出し、リグレットはこうではないかと考える・・・ティアとは真逆なタイプと言えるレオナであれば、ヴァンの事を色々と察した上で冷静に対処するだろうこと・・・そしてそれをヴァン自身感じてはいるが、言葉通りに妹として愛しているからこそそこについては深く突っ込んで考えたくはないのだと。
「・・・いけないな、もうレオナの事に意識を集中するのは止しておこう・・・当面の問題はティアをどうするかについてだが、どうしたものか・・・カンタビレと会って話をしたこともそうだが、その中身について閣下に言うのかに私だけで行動するべきかどうかも・・・」
そこまで考えてリグレットは考えをレオナから戻そうとするが、戻した所で彼女にとって酷く頭が痛い問題であることに変わりはなかった。ティアが起こす可能性のある問題をどうするべきか、それを真剣に自分が考えねばならぬと感情的になっているために・・・









・・・一人の人間の存在により、本来の物語は小さくも大きく変わっていく。本来なら参加しない人間も交えて。

そしてその存在により後に英雄と呼ばれる人物と、姉の辿る道筋は大きく変わることとなる・・・だがそうなることなど誰も知らないままに物語は進む、本来とは違う物語の始まりが待つ二年後へと・・・



END






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