心臓に打ち込まれた罪の楔

「さて、ガイ・セシル。改めて聞くがお前はガルディオスの生き残り、ガイラルディア・ガラン・ガルディオスか?」
「・・・はい、そうです・・・」
先程までの希望に満ちた元気のよさはどこへ行ったのか、ガイはピオニーの質問に消え入りそうな声で答える。
「そうか・・・ならお前はマルクトの貴族になる。ということは皇帝の俺の命には従わなければいけないよな?なぁ?」
「はい・・・」
ピオニーの声は優しい声色ではあるが、威圧感を感じる。その声に気圧されながらガイは答える。
「よし、ならお前はもうキムラスカとの外交に出る事は許さん。そしてキムラスカからの客が来た際には自宅謹慎で、もちろんキムラスカの内にいる人物との連絡を取る事も許さん。いいな?」
「えっ!?どういう事ですか、陛下!?」
いきなりの宣告に今度はアニスがなんでだと噛み付いてくる。
「・・・知ってる者もいるだろうが、ガルディオスというのはホドを所有していた貴族だ。だがホドは戦争の際にファブレ公爵に攻め込まれて一族郎党皆殺された・・・と思われていたんだ」
そこでイオンとティアとアニスは未だ憔悴しきっていて何も反応しないアッシュを一回見た後動揺を隠しきれていないガイを見る。
「そんなガルディオスから生き残りがいる、それがファブレ公爵の屋敷に使用人として生活していた、それで当時屋敷の息子となっていたルークに刃を向けていた・・・ここまで来ればガイとやらの目的もわかるだろう?」
そこで三人はハッと息を飲む。
「そう、目的は復讐以外の何物でもないと簡単に見当がつく。そして実際に刃を向けていた現場をレプリカルークは目撃している。つまり証拠も揃っている・・・ついでに聞くがお前はレプリカルークだけではなく、オリジナルルークに対しても刃を向けた事はあるか?」
「・・・はい」
次々明らかになる罪状白状に、周りは雑然としてくる。
「ここまで言われればわかるだろう。今のキムラスカの代表者はレプリカルークで、ガイがガルディオスの生き残りとしてのうのうとキムラスカに顔を出せばせっかくの和平が無駄になりかねん。故に俺はマルクトからガイを出す気はない」
自らに対して殺意を持つ者と認識されている人物がマルクトの滅んだ貴族で、あまつさえ「よう、ルーク」と身分と殺そうとしていたことを頭からスポンと抜かして気安く声をかけるような人物を信じるに値するはずもない。そしてそんな人物をあっさり起用するマルクトも信用に値すると判断出来るわけがない。
「今更自分はガルディオスの生き残りではないと否定したところで無駄だ。お前はレプリカルークだけでなく、こちらのオリジナルルークにまで被害をもたらそうとした。暗殺を未遂とはいえ行おうとした奴を俺は表に出す訳にはいかん・・・ああ、先に言っておくがこの処置は最大限に罪を軽減した上で言っている。もしお前がこの処置を不服とするならマルクトは即刻お前をこれ以上の罪で処断する・・・ガルディオス伯爵の生き残りが預言による敗北のための戦争を引き起こそうとしたものというオマケを付けてな・・・さあ、改めて聞こう。お前はこの処置は不服か?」
不服と言おうものなら一切の情け無しに首が戦争支持者という汚名までついて飛ぶ。ここまで言われ不服と言えるようならそれはただの自殺志願者だ。
「・・・はい、不服ではありません」
やはり自らの命はなにより大切なようで、ガイは苦汁の表情でピオニーの言葉に返事した。
「そうか、なら宮殿内に各々の部屋を用意してある。処分を言い渡した他の三人とともにそこへ行け。後で残りの二人の処分を言い渡した後お前の役割を伝えに行く」
「・・・はっ」
力無くピオニーの言葉に返事を返すと、側に控えていた兵士達が動き出す。
「丁重にお連れしろ」
「はっ!ではどうぞこちらに・・・」
兵士の先導とともに、四人は兵士の後を付いていく。そしてその場に残されたのはキムラスカ兵士を除き、ダアト所属の三人だけとなった。





7/14ページ
スキ