漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

・・・改めて考えてみても、ティアの行動は大問題も大問題な行動としか言えなかった。他国の王族に連なる貴族の家に場にいた人間に術をかけて眠らせ、自国の人間に暗殺を行おうとするという字面だけで見てもとてもまともとは言えない行動・・・しかも当人に話を聞けば謝罪の意こそあれど、さもそれはご近所の家に偶然ボールを投げ込んでしまったからすみませんと言ったようなレベルの代物の謝意で、相手がどれだけの被害を被ったかに国で定めた法からしたらどれだけの罪があるのか・・・そんなことなど全く考えていない形でだ。

ハッキリ言って信長からしてもティアみたいな存在がいることなど考えてもいなかった。信長は自身の親の葬式の際に焼香の灰を握った親の遺体の方へ投げてぶちまけた前歴があるが、それはあくまでこんなことは普通はしないと敢えて分かった上での行為だ。だがティアはそれを天然、正確に言うなら全く理解しない上で行っている・・・信長の会ってきた人間の中にここまで常識知らずな人間はいなかった。

加えて言うなら一応使えないかとティアと一度話してみた信長ではあったが、先に言ったよう大問題を近所のトラブル程度にしか考えていない・・・いや、あくまで自分基準で大問題かそうでないかの基準があるだけと信長は見た。自分の行動は意味があり世界の為になるから多少の無茶は許されるし、そして形式ばった態度を取れない人物は貴族だろうが何だろうが見下す人物だと。

・・・自身に対する裏切りを多く経験してきた信長ではあるが、ここまで信長からして自分と噛み合いようがない上に使いようがない人物は初めてだった。だからこそ信長はティアを引き込まない事にしたのだ。どこをどうした所で素直に言うことを聞いてくれるとは思えないからこそ、もう単純にその罪を持って問答無用に事を済ませた方が楽に行くと。



(ま、セフィロトだったか?そこでのユリア式封呪の解除には使わせてもらうがな、今までの礼も含めておっぱい共々な・・・!)
リグレットが頭を下げるその姿に信長は邪悪でいて、邪な考えを浮かべる。解除にティアを使うと。



・・・ティアを引き込まないと決めたとはいえ、ただで全てを終わらせる程信長も甘くはない。なら何にティアを使うのかと言うと、ヴァン達の研究を知ったバダック達からの報告によると簡潔に言うなら世界の危機をどうにかするためにユリアの血族が必要になるからだ。

その報告では現在の世界を成り立たせている物がそろそろ限界を迎えるらしく、それをどうにかするためには最低でもイオンにユリアの血族が必要であり、その血族は使えるとするならヴァンとティアしかいないのだ。

しかしヴァンはこれからのダアトをまとめさせる人材として必要ということを考えると、適任なのはティアとなる。しかし現状でティアが信長やヴァンの協力要請を受けたとしてもすんなり首を縦に振るなどまず有り得ないだろうし、イオンを担ぎ出しても自分が悪くないと公に証明させるようにしなければ協力したくないといった事を口にする可能性は非常に高い。

そんなことをしてティアの要求を呑むような事をすれば、後々にティアはダアトの現状についてを不満だと口にしてキムラスカ側に対しての住民達の抵抗のシンボルとして担ぎ上げられるかもしれないと信長は見ていた。そこでユリアの血族と明かされたなら尚更住民達は勢いづき、一気に今までの動きを台無しにしかねないとも。

故に信長はティアを逃がさないとした上で、影で利用するのだ。世界を無事に存続させるためにもと・・・ちなみにおっぱいに関しては単にエロ心溢れるオヤジとして、いい乳だから揉もうと考えているだけである。そこに性欲はあっても裏など存在しないのだ。
























・・・それでダアトから信長達が離れた後、オールドラントはキムラスカ主導の元で大きな変貌を遂げた。前代未聞の出来事ばかりであったが、それらの行動は後世において大きく讃えられる出来事と見られるようになった。預言は何の為に詠まれたのかを本当の意味で理解し、それらを広めたと言うことで。

だがその裏に何があったのか、真に誰が動いていたのかを知る者は当時に生きていて事に挑んでいた者くらいしか知る者はいない。かつて魔王とも呼ばれた人物が、いくつもの策を張り巡らせていくつもの命運を変えていった事は・・・









END











23/24ページ
スキ