漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

・・・バダックとアッシュ、この二人がヴァンの配下として潜んでいた上で幹部という扱いを受けていた事からどんな計画を立てていたのかを信長は十分に理解していた。それが達成されればどれだけ危険なのかも。

だからこそヴァン達の計画もまとめて潰す事にした信長だが、同時にこう考えてもいた・・・最終的な目的はやり方は違うとは言え、自分とヴァン達の物は似通っている。ならばどうにかヴァン達をこっちに引き込むもとい、利用出来ない物かと。ただこの考えは流石にインゴベルトを始めとした味方の面々からは裏切るからやめろくらいは言われて反対され受け入れられないだろうとして、あくまで信長の心の中だけで決められた事である。

それでどうやってヴァン達を利用するかを段取りを考えていた信長であったが、図らずもティアとルークの事件がそのきっかけをくれたのだ。ヴァンを拘束した上でリグレット達に言うことを聞かせるきっかけになる、千載一遇のきっかけをだ。

それでヴァンを公然的に牢屋に縛れるようになり、外の様子とガイ達の真実に自分達の最終目的にヴァン達一行の目的を把握していること・・・それら全てを明かした上でヴァンに取引を持ち掛けたのだ。協力しないならリグレット達共々始末するが、いる場所は把握しているしバダックとアッシュがキムラスカに合わせて行動を起こせば確実に命はないと告げる形で。

その結果としてヴァンは苦い顔をしながらも頷かざるを得なかった。計画を捨てた上で自分達がキムラスカにマルクトの連合軍が蹂躙した後のダアトの規律を取り締まる役割を背負い、違反者をことごとく罰していくという役目を・・・まぁこの辺りはヴァンからしても少なからず望む事でもある為、多少は本望であったりもするが信長はそれを見越していたりもする。

・・・ただそうやってうまく行ったからいいものの、やはりティアの行動という物は信長からしても最悪のイレギュラーであった。



「・・・後、それとこれは確認になるが・・・やはり閣下と共にティアを助ける気はないのか?」
「当たり前だ。むしろ助ける理由がないし、助けてもその意味も介せず逆恨みをするのが関の山だろう。下手をすりゃキムラスカは間違っている、預言を詠むのを止めさせるなんて横暴だ・・・ってなことを言って、ダアトの人間を煽るような事すら言いかねん。そうなりゃ全部台無しな上、お前らが全部尻拭いすんだぞ?・・・お前の教え子であってヴァンの妹が起こした事、それら全てをな」
「っ・・・!」
「それでもいいってんならそっちに返してやるよ。ユリアシティに突っ込んでもダアトの牢獄に突っ込んでも同じような事をするだろうし、お前らの説得で簡単に心変わりをするとも思えないがな。元はといやお前らの行動に不信を抱いた上で、お前の教えが甘かったからあれがキムラスカの重鎮の家で暗殺紛いの事をするって考えなしの行動を起こしてあの結果になったんだからよ」
「・・・・・・すまない、悪かった・・・ティアはそちらで好きに処分してくれて構わないし、改めて私から謝らせてもらう・・・教え子がそのようなことをしてしまって・・・」
それでも怒りを抑えてティアについて慈悲を暗に求めるリグレットだったが、信長がギャグテイストな表情になりながらもグチグチネチネチと口撃を仕掛けてきた事に逆に丁重に頭を下げた。心からティアの事を悔いていると言った様子で。












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