漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

「いつでも来れる時に来い。まぁ俺はしばらくバチカルから離れられんし、ナム孤島にも頻繁に行ける訳じゃないから俺がいるわけでもないがな」
「しばらく、と言うと・・・戦後の処理もそうですが、ディスト達の事をどうにかするためにですか?」
「まぁな・・・ヴァンの元からあいつらを引ったくったからには、ちゃんとこっちで使えるようにしないといけないからな・・・クククク・・・!」
「・・・止めてください、その笑い方は」
信長は気にするでもなく重ねていつでも来るように言うとガイはディスト達の事を切り出すが、そこで愉快さと邪悪さが入り雑じった笑いを見てガイは大分引いてしまう。



・・・アッシュがディスト達を引き連れバチカルに戻ることにした理由は信長からの命令ではあるが、そこにはいくつもの思惑がある。その中で最も大きな狙いは何かと言えば再起をかける可能性があるヴァン達の頭脳を引き剥がすと共に、キムラスカの技術力を引き上げる為だ。

実際ヴァンに話をしに行った際に信長はただ協力するならと言ったわけではなく、協力するなら助けると持ち掛けただけではなく後で意見を翻して行動を起こさないように証明するようにとディスト達の身柄を要求した・・・この際ヴァンは苦い顔を浮かべたが、断ればそのディストも含めたリグレット達の命そのものすらも危うくなるということからやむを得ないと頷いた。

それでヴァンからディスト達を引き渡すという許可を得た信長はリグレット達との交渉の際に当人に話をしたが、当人はいきなりの事もあって拒否を示した・・・が、そんな拒否程度で信長が納得する訳もなく、近くで見ていたリグレット達がドン引きするような光景を見せつける形でディストの心をへし折りにかかった。

そしてその結果としてディストを始めとした神託の盾の研究者達をダアトに残った面々すべてをかき集めた上で、レプリカに関連する技術の物を全て引き上げさせるという物になった。ヴァン達には今までの成果を何も残さない・・・そういった形でだ。

それで現在はアッシュと共にバチカルに戻ることになったディストだが、信長の予定ではこれからの研究ではレプリカ関連の事には一切触れさせないようにする予定である。あくまで信長がディストに求めているのはレプリカ技術の発展ではなく、むしろレプリカ技術などいらない・・・そう考えている為に。

だからバチカルに戻ったならディストにはそう伝えた上で、それ以外を研究するように信長は言うつもりだ・・・拒否するなら泣かしてでも言うことを聞かせると、そうサディズムが存分に含まれた考えと共に。



「いいだろ、もうちょい笑わせろよ。そろそろ俺らもここを出て、ダアトに向かってクソ真面目な顔で演説しなきゃなんないんだぜ。お前はガルディオスの事も含めてよ」
「っ!・・・そうでしたね、その時が近いことをつい忘れかけていました・・・!」
ただ信長が何気に返した言葉にガイは使命感に燃やした表情に変わる。ガルディオスと言われた事で。



・・・本当のナタリアについてはキムラスカ国内はおろかオールドラント中にキムラスカが情報として広めた為、現在その事実についてを知らない者はそうはいない。ただガイ達ガルディオスの家の事はまだ公表はしていないが、それはモース達の処断の際に明かす予定である。

だが何故すぐに明かさなかったのかと言えばナタリアの事実と被らせればどちらもその意味が薄くなりかねないかったこともあるが、ガイが行動を共にする事を考えれば先に事実を明かすと信長と行動を共にする事は立場的に難しい状況になったからだ。

キムラスカとマルクトの共同で隠していて承知の上でファブレで動いていたとは言え、ガルディオスというマルクトの名家の一族であるガイがその立場を明らかにしたなら後はジェイドに任せてグランコクマに・・・と言った風に事実を知らずにいた者達は言うだろう。

信長にガイ達からすればそう言った声を無視して行動しても良かったのだが、どうせならと思いダアトを制圧した際に事実を明かすことにしたのだ。順調に事を進める為と、ガルディオスも生きているというインパクトを十分に与える為に。そしてそうすると決めたが故にガイは張り切っているのだ。いよいよガルディオスを公に復活させる時が近い為に。












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