漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

「まぁヴァンについてはこれくらいにするとして、アッシュ・・・いえ、本当のルークは今どうしているんですか?」
「今頃はディストにヴァン率いる神託の盾の研究者どもを丸ごと引き連れた上でバチカル行きの船の中だ。本当ならリグレット達に接触した後にバチカルに戻っても良かったんだが、せめて最後に何かやりたいと言ったからその役目を任せたんだがな」
「そしてバチカルに着けば、晴れてアッシュではなくルークに戻るという訳ですか」
「ま、あいつの場合はあえてヴァンの元に行ってもらった訳だからな。その役目が終わったなら戻って来るのは当然だし、あいつも戻れる日を心待ちにしているってバダックから報告を受けてたから尚更に戻さない訳にもいかん。元々あいつが本物のルークなんだからな」
そこからヴァンについての話題をアッシュへと変えるガイに、信長は本物のルークだから元に戻すべきと返す。ただそう言われたガイの表情はどことなく暗い物に変わる。



・・・ルークとアッシュ、二人の関係はルークがアッシュを拐った上でその身体情報を用いてヴァンが造ったアッシュそっくりのレプリカという存在である。

それでヴァンはアッシュに対してルークがキムラスカにいるからもう帰れない、だからルークを恨めと言ったような内容を刷り込んでいった・・・が、ヴァンの配下として潜り込んでいたバダックからの報告を受けた信長は事前にクリムゾンと共にアッシュに話をしていたのだ。ヴァンがアッシュを拐おうとして動いているが、下手にそれを難しい状況にさせてしまえば却ってヴァンがどう動くか分からなくなる・・・だからあえて従順なフリをして拐われ、バダックと共にダアトや神託の盾の内情を秘密裏に探ってこい。そういった話をだ。

その話にアッシュは頷いた。自分だけでなくキムラスカ全体の命運にも非常に大きく関わるならということもあり・・・そしてアッシュはヴァンにすんなり拐われ、今までヴァンの言う通りにしてアッシュとして生きてきた。その裏でバダックと共にキムラスカに情報を送り、ヴァンの言うようにルークがキムラスカにいるから戻れない・・・などと言うことは無いと理解しながら。



「ま、ルークの事が気になんならナム孤島に時々くりゃいい。一々仮の名をつけんのも面倒だしアッシュが戻るんならバチカルにはいられないからどうせならそのまんまルークでいいって言った上で、俺が面倒を見るって言ったからな。だからあいつは基本的にナム孤島近辺で過ごすことになるから、姉共々来るならあいつも喜ぶだろ」
「いいんですか?」
「あぁ、構わねぇよ。ナム孤島はシェリダンに程近くはあるしキムラスカの領土じゃあるが、基本的に公に解放するような施設を造るつもりはない。そんな場所に今となっちゃ同盟国の人間を招かない理由もないし、何よりルークの事がお前も気になるだろうしな」
「・・・すみません、いずれ近い内に姉と共にそちらに向かいます」
その様子を見て信長がルークに会いに来るようにすればいいと言えば、ガイは多少申し訳なさそうに頭を下げる。



・・・ガイにマリィはファブレで生活する際、ヴァンにより入れ換えを行われてファブレに来たルークを可愛がった。ルークがヴァンにより策略の為にファブレに置かれた事は知ってはいるが、本人はそんな自覚もなくただ純粋な子どもとしてそこにいた為にほだされる形でだ。

だからこそガイ達はルークの事を個人的な意味でも気にかけて大事にし、弟のような存在と言うように見ていた。ヴァンの企みがそのまま進めば命を落とす事になるというから尚更にである。













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