心臓に打ち込まれた罪の楔

「なっ・・・!?」
「お前は自分の力で和平にこぎつけたとでも思っているのか?セシル少将から話を聞いた時は俺も半信半疑だったが、お前から話を聞いてよくわかった。お前は戦争に発展しても全く不思議じゃない態度を取ってたってことはな。大体事情を聞けばレプリカルークはティア・グランツが屋敷に侵入した際に事故の形でマルクト入りしたんだろ?」
「・・・!それは本当なのですか!?ティア!?」
「は、はい・・・」
もしかしてマルクトに飛んできた理由を把握していなかったのか、ピオニーはジェイドの珍しいうろたえぶりを面白がる様子もなく顔を歪める。
「・・・あのなぁ。いくらなんでも事故で意図せずに国境を越えてしまったやつを、問答無用で不法侵入者って扱うのは法を司る者にはありえないことだぞ。なんでお前はマルクトに飛んできた詳しい事情を聞かなかったんだ?」
「それは・・・マルクトヘの敵対行動ではないからと言われたためです」
「・・・おい、お前本当に大人なのか?自分達に関係ないからってそれで問題終わらせて、逆に自分達の理屈だけ相手に強制で押し付ける。頭がいいだけのガキが都合よく周りに自分の思惑に合わせてくるように仕向けてるだけだろ、お前の行動は」
辛辣な言葉にフリングス少将以下の謁見の間のマルクト陣はジェイドに厳しい目を向ける。
「なあ、お前本当に和平結ぶ気あったか?つってもどっちみち俺がお前を名代に選んだ事やその行動で、キムラスカには和平を結ぶ気はないって思われたんだぞ」
「・・・申し訳ありません」
自らの行動が主の格を下げる事になった、ピオニーの失望の声を何度も聞いたジェイドはもはや言い訳の声すら出てこなかった。



「なら大人しく罰を受けろ。本当に申し訳ないと思っているならな」
「待ってください、陛下!そこまでしなくても・・・!」
うなだれて抵抗の兆しが見えないジェイドに、イオンが声を大きくして弁護に入る。
「先程も言っただろう、導師。和平に向かうに相応しくない行動を取ったと。だからジェイドには処罰を与えないといけない・・・それにそれを言うなら導師はジェイドの態度は正しいものだったと胸を張って言えるか?」
「それは・・・」
口ごもるイオンにピオニーは甘いという見方しか出来ない。
「・・・はぁ、つっても俺も身内に甘いって向こうに見られてんだよな~」
だがそれは自分も同じ事だと、ピオニーはやけに疲れた声を出す。
「それに導師。この処分は俺を試してるんだよ、マルクトは信頼に値する国なのかどうかとレプリカルークがな」
「え・・・それはどういう事ですか?」
イオンの声に同調するように、ガイ達も頷く。
「はっきり言えばマルクトの印象はレプリカルークの中では最悪だろう。ジェイドの態度しかり、ジェイドを名代として送った俺にしたってな。それでレプリカルークは最後のチャンスとして厄介者のお前ら・・・導師を抜かした奴らをどう処断するかでマルクトとの対応を決める気だ」
「そ、そんな・・・」
「だが俺にはそれを高圧的だとはねのけて別条件を提示できる権利はない。ジェイドが散々キムラスカを馬鹿にした態度を取ったんでな、俺はレプリカルークに頭が上がらない。もし俺がさっきの処分を拒否すれば、食糧の無料提供を何十年にも渡ってキムラスカに行う事を条件に和平を結ぶか、食糧と譜業関係の取引以外は国交断絶という二つの選択肢以外は受け入れないと言ってきた」
和平を結ぶのに国の利益になる食糧提供を何十年にも渡って無料で行うというのは、はっきり言えば割に合わない。ならば国交断絶というのはどうかと言われればはっきり言ってこちらも割に合わない。昔からの犬猿の仲の二国が更に関係が悪化する事が簡単に予想されるからだ。
「かと言って、戦争もなしだ。預言には戦争が詠まれていると向こうから情報を受けた。やるとしたらこっちも負ける訳にはいかないが、向こうには戦争の意志はないんだからな・・・だから俺はお前ら全員の処断に決めた」
一気に冷たくなったピオニーの声に全員に緊張が走る。
「そこにいるオリジナルルークとナタリア王女は国民に見捨てられたから体のいい役割でキムラスカから見捨てられた。もうそれでいい。ジェイドも今言った通りキムラスカへの不敬によりもう処分は決定済みだ。さあ、次は・・・」



「ガイ・セシル。お前の番だ」









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