漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

・・・そしてモースはそれなら一先ず用意をしてくるとイオンに言い、自身の私室へと戻った。



「・・・戻られましたか、大詠師。結果はいかがでしたか?」
「成功だ、特に説得する事もなく頷いたのでな・・・後はお前が言ったように私達はさっさとユリアシティに行き、キムラスカとマルクトがダアトから去るまで身を潜める。後に再起を図るためにもな」
「はっ・・・ではキムラスカに導師を引き渡すための時間もありそれまでには済ませないといけませんので、早速参りましょう。他の方々もお待ちいただいています」
「うむ・・・」
それで私室にて待っていたリグレットに経過を聞かれ、早々とユリアシティに行くと言うモースに了承を返し共に部屋を後にする。



・・・なんの事を話してモース達が動いているのかと言えば、単純にイオンをキムラスカに売って自分達は安全な場へと逃げる算段をしているのだ。

手紙が届いた際にその中身を見てモースはこの絶対不利な状況で自分が死ぬことを避けると共に、後にダアトとローレライ教団が再び預言をもって世界を導く再起を図ろうと考えたのだ。今の状況を覆す・・・そうしなければ世界の繁栄は訪れぬと信じている為に。

その為、リグレットと話をしてイオンをダアトを滅ぼさないための生け贄として差し出すと決めて、自分と同じ一派の人間達をユリアシティという一部の人間しか知らない場所へと避難することに決めたのだ。それがいかに外道な考えなのかなど、全く考えずに。


















・・・それでリグレット達の護衛の元、ユリアシティにまで辿り着いたモース達は一連の流れを市長に説明して匿ってもらうことになった。事が済んでダアトの安定が確定したならリグレット達に来訪してもらい、再びダアトに戻るという流れにする形で。

そしてユリアシティにてモース達が部屋をあてがわれ、一夜を過ごした・・・



‘ドドドドドドッ!’
「な、何だ!?」
「市長、これは一体何が・・・!?」
「い、いや・・・私にも何が起きているのか・・・!」
・・・そして一夜明けた後に市長の部屋に来たモース。
だがそこで突然聞こえてきた轟音に市長とモースは共に何が起きたのかと驚きに顔を見合わせる。
‘バタンッ!’
「いたぞ!ここだ!」
「なっ!?キ、キムラスカ兵だと!?ど、どういうことだ!?・・・うわっ、何をする貴様ら離せ!」
「・・・クケケケ・・・ここにいたか、大詠師」
「なっ!?き、貴様は・・・ノブナガ!?」
「ほ~う?俺を目の前にして呼び捨てのタメ口かい?まぁ敵に対する態度としちゃ間違っちゃいねぇから別にいいがよ」
「っ・・・!」
そして轟音と共に扉を開けて入ってきたキムラスカ兵達に速攻で捕縛されるモース達の前にしたり顔の信長が現れ、たまらず素で声を上げたモースにニヤニヤと笑みを浮かべ返すとしまったと言わんばかりにハッとする。
「別にいいって言ったろ。だってお前らは俺らの敵なんだしよ」
「っ・・・な、何故ここに貴方が・・・」
「ほう、ここまで来てまだ俺に対して取り繕おうってのかい・・・ま、別にいいが理由を言うなら俺の後ろを見てみろ」
「後ろ・・・っ!?・・・リグレットにラルゴ・・・まさか、貴様ら・・・裏切ったと言うのか・・・!?」
「まぁ責めてやるな。ラルゴはともかくリグレットは敬愛する閣下の命がかかってんだからよ」
「つまり、それは・・・ヴァンの命と引き換えに、我々を売ったと言うのか貴様は・・・!」
「・・・私とて不本意なことには違いはない。だが私の忠誠はあくまで閣下に向けた物だ!断じてダアトや神託の盾、ましてや貴様などに誓った物などではない!」
「っ・・・!」
信長は笑みを崩さぬまま後ろから現れた二人の事を指差し、続いた会話からモースはその中身にリグレットに対する怒りを浮かべるが更なる怒りをぶつけられてたまらず畏縮する。そんな怒りを向けられるとは微塵も考えていなかった為に。









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