漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編
「まぁとりあえず楽であることに越したことはありませんが・・・この後は手筈通りに進ませるのですか?」
「まぁな。向こうからすりゃもう勝ち目がかなり薄いってのは今回で十分に分かっただろうし、後は食料攻めをすれば一層厳しい状況になるだけだ。そしてケセドニアのアスターもこっちに付くと言っているから、食料を要求してもダアトに食料が届くことはない・・・そこにポン、と一手かけりゃ向こうは食い付かざるを得ねぇよ。状況の打開の為、そして自分達の身の安全を買うためにもな」
「・・・そしてそれを元にダアトにとどめを刺す、と言うわけですか・・・改めて思いますよ。これだけ綿密な策を練れる方を擁するキムラスカを敵に回して戦争をするような事にならなくてよかったと・・・」
「ハッ、死霊使いサマにそう言ってもらえるたぁ光栄だな」
それで話題についてを次の行動に移すジェイドに信長は兵糧攻めのオマケ付きで行うと言い、その中身に冷や汗混じりに称賛を向ける。信長と対峙しなくて良かったと、上機嫌で笑顔を浮かべるその姿に。
・・・それから数日後、信長の言うように神託の盾がボロボロにされたこともあるが、食料攻めを受けたダアトは教団員に上層部を問わず動揺が広がっていた。パダミヤ大陸では食料の生産など精々が個人が所有するいくつかの畑がある程度で、とても各地から引き上げさせられた教団員も含めた面々をずっと食べさせる事が出来るような量の食料など提供出来ない為に。
その事から上下問わずに絶望的な空気がダアトに広まっていた、降伏しなければダアトは本当に滅びてしまう・・・そんな時に、キムラスカからの使者がダアトへと来た。
「・・・これは・・・本当に、キムラスカの方がこの手紙を・・・?」
「その通りです、導師・・・その中に書かれている内容を信じたくないという気持ちは分かります。ですがその中身は偽物だと否定することは出来ません・・・今なら降伏を受け付けるが、その為の条件として導師の身柄を差し出すようにすること・・・と言った中身に関しては」
「・・・っ!」
・・・導師の私室にて、イオンと対峙するモース。
そこで手元の手紙を持ち青い顔で震えるイオンに、モースは残酷に告げる。身柄を差し出す、つまりはイオンの命をキムラスカが求めているのだとばかりに。
「イオン様・・・」
「アニス、僕は大丈夫です・・・これを拒否すれば、ダアトはどうなるのですか?」
「以降は降伏を受け入れられず、それこそこの教会や街も含めて全てが滅びるまで戦うことになると思われます・・・それらを避けるためにはもうそれこそ、導師がキムラスカにその身を差し出す以外にダアトが形を残すことは出来ないでしょう」
「っ!・・・やはり、そうなりますか・・・もうダアトには残った戦力も食料もなく、ダアトを守るためにはそうするしか・・・」
「イオン様・・・もしかしてそうするつもりなんですか・・・?」
「・・・もうそうする以外にダアトを残す手段はありません。キムラスカが本気である以上は。ですから僕はキムラスカの船に向かいたいと思います・・・僕の身一つでダアトが助かるのならそうするしかないと思いますから・・・」
「っ!・・・イオン様ぁ・・・!」
「・・・決断していただいてありがとうございます、導師」
それでアニスが心配そうに声をかけるがイオンは決意が決まったと哀しみを携えた笑みで告げ、泣き顔に涙声を浮かべるアニスにモースは頭を下げる。だが二人の角度からでは見えなかったが、下げた頭の下のモースの顔は歪んでいた。イオンが死ぬのはまず間違いないだろうという状況なのに、酷く嬉しそうな表情で。
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「まぁな。向こうからすりゃもう勝ち目がかなり薄いってのは今回で十分に分かっただろうし、後は食料攻めをすれば一層厳しい状況になるだけだ。そしてケセドニアのアスターもこっちに付くと言っているから、食料を要求してもダアトに食料が届くことはない・・・そこにポン、と一手かけりゃ向こうは食い付かざるを得ねぇよ。状況の打開の為、そして自分達の身の安全を買うためにもな」
「・・・そしてそれを元にダアトにとどめを刺す、と言うわけですか・・・改めて思いますよ。これだけ綿密な策を練れる方を擁するキムラスカを敵に回して戦争をするような事にならなくてよかったと・・・」
「ハッ、死霊使いサマにそう言ってもらえるたぁ光栄だな」
それで話題についてを次の行動に移すジェイドに信長は兵糧攻めのオマケ付きで行うと言い、その中身に冷や汗混じりに称賛を向ける。信長と対峙しなくて良かったと、上機嫌で笑顔を浮かべるその姿に。
・・・それから数日後、信長の言うように神託の盾がボロボロにされたこともあるが、食料攻めを受けたダアトは教団員に上層部を問わず動揺が広がっていた。パダミヤ大陸では食料の生産など精々が個人が所有するいくつかの畑がある程度で、とても各地から引き上げさせられた教団員も含めた面々をずっと食べさせる事が出来るような量の食料など提供出来ない為に。
その事から上下問わずに絶望的な空気がダアトに広まっていた、降伏しなければダアトは本当に滅びてしまう・・・そんな時に、キムラスカからの使者がダアトへと来た。
「・・・これは・・・本当に、キムラスカの方がこの手紙を・・・?」
「その通りです、導師・・・その中に書かれている内容を信じたくないという気持ちは分かります。ですがその中身は偽物だと否定することは出来ません・・・今なら降伏を受け付けるが、その為の条件として導師の身柄を差し出すようにすること・・・と言った中身に関しては」
「・・・っ!」
・・・導師の私室にて、イオンと対峙するモース。
そこで手元の手紙を持ち青い顔で震えるイオンに、モースは残酷に告げる。身柄を差し出す、つまりはイオンの命をキムラスカが求めているのだとばかりに。
「イオン様・・・」
「アニス、僕は大丈夫です・・・これを拒否すれば、ダアトはどうなるのですか?」
「以降は降伏を受け入れられず、それこそこの教会や街も含めて全てが滅びるまで戦うことになると思われます・・・それらを避けるためにはもうそれこそ、導師がキムラスカにその身を差し出す以外にダアトが形を残すことは出来ないでしょう」
「っ!・・・やはり、そうなりますか・・・もうダアトには残った戦力も食料もなく、ダアトを守るためにはそうするしか・・・」
「イオン様・・・もしかしてそうするつもりなんですか・・・?」
「・・・もうそうする以外にダアトを残す手段はありません。キムラスカが本気である以上は。ですから僕はキムラスカの船に向かいたいと思います・・・僕の身一つでダアトが助かるのならそうするしかないと思いますから・・・」
「っ!・・・イオン様ぁ・・・!」
「・・・決断していただいてありがとうございます、導師」
それでアニスが心配そうに声をかけるがイオンは決意が決まったと哀しみを携えた笑みで告げ、泣き顔に涙声を浮かべるアニスにモースは頭を下げる。だが二人の角度からでは見えなかったが、下げた頭の下のモースの顔は歪んでいた。イオンが死ぬのはまず間違いないだろうという状況なのに、酷く嬉しそうな表情で。
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