漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

「・・・導師、大詠師。私にはお二方が今の話をお聞きになり、現在どのようなことをお思いになられているかは推し量る事しか出来ません。ですがそれを踏まえて敢えて申し上げさせていただきますが、一刻も早くこのケセドニアから出られてダアトに戻られることをお勧めします」
「な、何故ですか!?この後私達はバチカルに戻り、一刻も早くインゴベルト陛下の誤解を解かねばならないんですよ!?」
「今話したことがキムラスカからこのケセドニアにマルクトだけでなく、ダアトにまで伝えられている・・・そう考えれば、貴殿方はダアトに戻らざるを得なくなる筈です」
「えっ・・・!?」
だがアスターは話を止めずにダアトに戻るように言うがイオンはならばこそバチカルに向かうべきと声を大きくして主張した為、ダアトにも情報が行ってるからと返すとどういう事かと不安に揺れた表情を浮かべる。
「キムラスカより渡されたこの手紙に預言の中身が真実か否か・・・その真偽に関して私もどうなのかは分かりませんが、それは現在ダアトにおられる方々もそうなっていることでしょう。いえ、おそらくはこのケセドニアの街中より確実に混乱しているのは確実な筈・・・何故ならもしその預言の中身が真実であったとしたなら手紙の中身もあいまり、ダアト内で論争が起きているだろうからです。その中身から考えれば少なくとも預言の事を知っていた者がダアトの中にいて、かつそれをダアトの内々ですら何故公表しなかったのか・・・という論争が」
「「!?」」
「・・・っ!」
そう言った理由に関して現在ダアトでどういった話がされているのかとアスターは推測し、イオンとアニスは純粋に驚きを浮かべるがモースは冷や汗を瞬時に大量に浮かべ息を呑んでいた。
「・・・重ね重ね申し上げますが、預言が本当かどうかは私には分かりません。ですが今のダアトはまず間違いなくキムラスカに宣戦布告をされたこともあり、真偽の程を確かめた上でどうするべきかと協議していることでしょう。そしてその結論次第ではキムラスカの怒りを鎮めるため、今ダアトにおられる詠師の方々が緊急で結論を出す可能性が高いでしょう。導師や大詠師がいないなら我々で決めるしかない、そのようなことをした責任者を引き渡すのがダアトを任された我々の役目だ・・・とでも考える形でです」
「それはっ・・・!」
「導師!急いでダアトに戻りましょう!確かにキムラスカの誤解を解くことも重要かもしれませぬが、我々がダアトに戻らねばどのようになるのか分かりませぬ!キムラスカにはその後で弁明すればいいはずです!」
「モース・・・ですが・・・」
更に話を続けるアスターに尚も反論しようとしたイオンだが、モースが焦りを感じさせながらまくしたてて来たことに圧されつつも何か返そうと口にしようとする。
「私も賛成です。もし導師達がバチカルに行きインゴベルト陛下の説得に成功したならまだいいかもしれませぬが、それが失敗したとなれば導師達の身柄がどのようになるか想像が出来ません・・・最悪の場合、お二方の身柄を拘束された上でダアトを攻めるという事態も考えられます」
「っ!?・・・そんな、事になるなんて・・・」
「一度慎重になられてください、導師・・・急いては事を仕損じるという言葉もあります」
「・・・わかり、ました・・・ここは一度、ダアトに戻ります・・・流石にそのような事になるのは、私の本意ではありませんから・・・」
だがアスターがモースの意見を擁護するように最悪の場合の可能性を口にしていくと、イオンも流石にそこまでして危険を犯せないと感じて力なく頷いた。



・・・そしてそのままイオン達はアスターの屋敷を後にした、一刻も早くダアトに向かう船へと乗るべく・・・









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