心臓に打ち込まれた罪の楔

「セシル少将?セシル少将が何故ここに・・・?」
ガイの場を弁えない質問にセシル少将は答えず、ジェイド達の横を通り過ぎるとセシル少将はピオニーの横に位置付く。
「さて、セシル少将。貴女がここに来られた意味はお分かりですな?」
「はい、よくわかっています。それでは陛下、読み上げてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
一連の流れに皆は疑問の色を隠しもしないが、セシル少将が何か書状みたいな物を取り出し、読み上げていく。
「『これが読み上げられるというのは非常に悲観的な事である。だが、私は手紙を何事もなく渡す事すら出来なかった無能の輩をこれ以上許す気はない。よって以下の処分をマルクトに委ねる。・・・オリジナルルークとナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアは二度とキムラスカの地を踏み事は許さず、マルクトの地にてキムラスカの大使として駐屯させよ。ガイ・セシルは使用人としての役割を解除し、マルクトに引き渡す。この者もキムラスカへの立入を禁ずるが、どのように扱われるかはマルクトに任せるものとする。ティア・グランツとアニス・タトリンは大詠師モースより許可を既にもらい、この書状が読み上げられた場合は神託の盾及び導師守護役から除籍させるものとする。この二人もガイ同様、マルクトにて処遇を任せる。最後にジェイド・カーティスはレプリカといえど事実王族であった私に対する不敬は許しがたい。しかるべき処置をマルクトにて取られた後、キムラスカへの報告を願う  ルーク陛下代理』・・・以上です」
事務的に読まれる声に、一同は絶句する。だが、ピオニーははぁと溜息を再びはくとあからさまにやる気をなくしていく。



「わかったか?おまえら全員レプリカルークにマルクトに送り出されたんじゃない。ここに来たのはおまえらを最終的にどうするかをおまえら自身に決めさせるためだったんだ」



ピオニーはそういうと本日何度目かの溜息を吐き、頭を抱える。
「言っとくけど、俺はこの申し出を断る事は出来ないぞ。ジェイド、お前自身がそうなるようにしてしまったんだからな」
「私が・・・!?」
心底それが意外だと言わんばかりにジェイドは声を乱し、目を見開く。
「その説明は俺よりセシル少将に話してもらおう。頼む、セシル少将」
「はい・・・先程のルーク様の書状にも触れられておりましたが、カーティス大佐のルーク様及びにキムラスカへの悪意を感じる態度に心底立腹しておられました。ルーク様はマルクトにティア・グランツと飛ばされた際にタルタロスに拿捕されたとおっしゃいました。そこでカーティス大佐は何をおっしゃったか覚えておられますか?」
淡々と語られる口調ながらもセシル少将の顔は憤りを隠せていない。
「・・・後で聞いてびっくりしたぞ、俺。協力しなければ機密保持のために軟禁しなければいけない、だったか?そうだったか?カーティス大佐?」
カーティス大佐と名前を呼ばずに名字を階級付けで呼ばれた事はジェイドはない。そのことにようやくジェイドはピオニーが本気の怒りを見せているのだと気付く。
「なあ、返事をしろよ。おい、どうなんだ?」
「・・・確かに私はそう言いました」
逃げ道のないピオニーからの圧力に、ジェイドは答えにくそうに答える。
「でだ、もしお前はキムラスカから和平の拒否を示されていたらお前はレプリカルークをどうしようとした?レプリカルークを盾に国内不法侵入で我が国に対する敵対行為を取ったとキムラスカに優位な体勢を取ろうとしたのか?それとも人質として交渉の道具にしようとしたのか?それとも全く別の考えを持ってたのか?」
「ルーク様は断った場合命の危険を感じられたので、カーティス大佐の脅迫まがいの申し出を受けたとカイツールから出された手紙に書かれていました」
セシル少将の一言にジェイドはルークがカイツールで手紙を出していたと初めて知り、動揺をあからさまにあらわにする。
「その手紙にバチカルでは即刻マルクトとの開戦をするべきだとの声が圧倒的多数にあがりました。ですがその声はある人物の一声がインゴベルト陛下に届いた事で変わったと私は聞きました」
「そのある人物の名前は分かるか?・・・モースだよ。モースがアクゼリュスヘ聖なる焔の光が行けばキムラスカの勝利は不変の物になり、預言通りになるからと敢えて和平を受けるフリをしろと言ってきたんだとよ」
そこでピオニーは一息区切りを入れて深呼吸すると、ジェイドに衝撃の言葉を告げる。



「つまりモースの声がなかったら和平の話は暫定に決まることすらなかったんだよ」









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