漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

「こちらも情報は入っていますが、ティア=グランツは決して屋敷に謡将を襲った理由について公言しなかったと聞いています・・・個人的な理由だと、決して口を割らない形でです。そこでカーティス大佐にお聞きしますが、そのような事をする輩を野放しに出来ないと思われたからこそティア=グランツを捕縛されたのですよね?」
「えぇ、その通りです。ルーク様の身の安全の事もそうですが、ティア=グランツは一貫して個人的な理由だと我々にも口をつぐんできました。ですのでもし放っておいた後に我々に対して武力行為を行ってきたとしても個人的な理由と言い張って通し、更にはイオン様が最終的に彼女を事情があったのだからと擁護に入る可能性も考えて私はティア=グランツの捕縛へと強行しました」
「っ!?・・・僕が・・・ティアを庇う可能性を考えていた、というのですかジェイド・・・!?」
「ノブナガ殿もおっしゃられましたが、ティア=グランツを信用出来る証拠などそれこそ全くありませんでした。そのような彼女を貴方は信じると言わんばかりの態度を取られたので、こちらも引く気はないと示したまでです。貴方の言葉でもティアを自由にさせる気はないとね・・・それともイオン様はティアから事情を聞き出した上で公平にキムラスカもマルクトも納得出来るような措置を取れたと、胸を張っておっしゃることが出来ますか?」
「っ・・・!」
それで信長が話を進めてジェイドにバトンタッチをし、イオンが義侠心を滲ませると言ったように怒りの声を向けるが全く揺るぐ様子もなくティアを庇える材料を問われると青い顔で言葉を失った。そんな心情的な事ではなく現実的な事は考えていなかったとばかりの様子で。
「ありがとうございます、カーティス大佐。一先ず導師に関しましては以上で、次は大詠師・・・貴方になります」
「わ、私にも何か信用出来ぬ事がおありだとでも・・・!?」
「・・・えぇ、それはもう♪」
「・・・っ!?」
信長はそこでジェイドに軽く礼をしてモースに話は移すと言い、当人は空とぼけようとするがニイィッと楽し気に笑う信長のその姿にゾクリと体を震わせる。
「まず一つ言わせていただくなら、先程こちらで申し上げていたマルクトが戦争の準備をしているという物・・・この情報を貴方は今さも最新の情報かのように申し上げましたが、どのようにして得ましたか?」
「そ、それは・・・そのような事、この場では関係はないはず・・・」
「いいえ、大いに関係ありますとも・・・まずこちらの和平の使者一行様がこちらにこうして和平を結ぶための書簡を持ってきていただいたのに、それら全てが嘘と先に言った根拠・・・それが本当ならこちらもまたマルクトに対する対応を協議するありますが、それがないというなら貴方は我々はおろかマルクトまでもを不当な策でハメて不用な疑いをキムラスカに持たせたとなることになりますよ?それもマルクトの代表の前で、丸々とそれらを聞かれる形でね」
「っ!?」
「その上で更に言うなら数日程前に貴方はこのバチカルに来ましたが、その間に貴方に何処か・・・それもマルクト方面から来たというような手紙などの物など、届いたと言った報告など一切なかった。つまりは貴方はマルクトの近況について知れるような状況にはとてもいなかった、と言うことなのですよ。もしマルクトが本当に戦争を企てた動きをしていたにしても、それを知れるような状況にはね」
「っ!!」
「モース・・・それは、本当なのですか・・・?」
そして信長が二つ指摘したこと・・・平然とマルクトへの嘘をついたことに情報を得ていた事も嘘と証明する言葉に、モースは息を詰まらせイオンは疑いの目を向ける。そんなことしていたのかとばかりに。









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