漂流魔王、異物として深淵世界を変える 後編

・・・16年の時が経ち、信長は来るべき時が来たと内心で狂喜染みた笑みを浮かべていた。ようやくダアトと預言を叩き潰す時が来たのだと。その上で信長はその時が来るのはもう少し後になると思っていた。ダアトがマルクトとの戦争を誘発するために仕掛けてくるのは。

しかしその信長の予想は裏切られた。予期せぬ形で・・・


















「・・・は?ファブレ邸にヴァンを襲いに来た奴がいて、なおかつそいつとルークの間で疑似超振動が起きて二人共々バチカルから飛ばされた?・・・冗談だろ、インゴベルト?」
「・・・冗談と思いたい気持ちは分かるが、事実だノブナガ・・・だからその顔は止めてくれ」
・・・インゴベルトの私室にて、急遽呼ばれた理由を話された信長。だがその顔は常なら渋いと評する事も出来る整った物の筈が、今は見る影もなくコメディチックに嫌そうに崩れていてインゴベルトはたまらずそこに突っ込む。
「いやいやいや・・・有り得ねぇよ・・・百歩譲ってキムラスカの要人を暗殺に来たってんならまだ分かる。キムラスカも全く敵がいない訳じゃねぇからな・・・だがわざわざバチカルにまで来て、ヴァンの暗殺だと?わざわざここまで来なくてもダアトでやりゃ済む話を、何でバチカルなんてダアトと関わりのねぇ場所で行うんだよ?そいつ本当にヴァン狙いだったってのか?」
「・・・ヴァンが言うには間違いないとのことだ。そしてその襲撃者が誰なのかと言えば・・・ヴァンの妹だという」
「・・・は?」
「今の話からお前の言いたいことは分かる。妹なら何故尚更キムラスカを選んだのだと言いたいと言うことがな」
「当たり前だーーーっ!何でわざわざキムラスカのバチカルなんて王の膝元で兄妹の命の奪い合いなんぞする!?歴史を紐解いていきゃ骨肉の争いなんざなんぼでも存在するし襲撃の手段として他国で暗殺するなんてのもあるが、暗殺するにしたって人に見られないようにすんのが大前提だ!それをファブレなんて公衆どころか王に近い貴族の家を使って白昼堂々襲うなど、どういうことだ本当に!?」
だが信長は全く表情を戻さないままに話を進めるがインゴベルトから更にもたらされた驚愕の事実に、理解出来ないとまくしたてていく。ヴァンの妹の行動があまりにも常軌を逸しているという気持ちを全面に押し出し。
「・・・頼む、落ち着いてくれノブナガ・・・わしもそう言いたい気持ちでいっぱいなのだが、今重要なのはその妹に対して文句を言う事ではない」
「・・・あぁ、分かってる。確かにその妹とやらに言いたいことは色々あるが、問題はそこじゃねぇ。重要なのはヴァンも含め、ダアトに対してどういう対応を取るかだ」
しかしインゴベルトが表情を引き締めたままで話を進めてきたので、信長もまた表情を元に戻して頭をかきながら重要なのはヴァンとダアトと返す。
「・・・まぁ疑似超振動についちゃ俺は詳しくはねぇが、第七音譜術士同士で起きた場合生存確率は高いとも低いとも言えねぇと聞いてる。だからルークの生存に関しちゃ一先ず置いといて話を進めるが・・・ヴァンはどう言ってる?」
「クリムゾンの話ではルークがどこに飛んだか判明したなら自分が探しに行くと言っているとのことだ。それに関しては保留を言い渡した後にクリムゾンはノブナガをすぐ呼ぶようにとわしに言ってきたため、お前を呼んだのだが・・・お前はどうするべきだと思う、ノブナガ?」
「・・・ヴァンをルークの捜索に行かせる訳にはいかねぇな。むしろヴァンを捕らえて、ここを足掛かりにしてダアトを突き崩すべきだ。もうちょい先になると思っていた予定を前倒しにする形でな」
そこからルークの事についてを触れてからヴァンについてを話す二人だが、インゴベルトからの問い掛けに信長は前倒しのきっかけにするべきと返す。








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