漂流魔王、異物として深淵世界を変える 前編

「ま、こっちはガルディオスもそうだがマルクトと戦争する気なんざ更々ねぇ・・・あくまで戦争をするならダアト、もっと言うなら預言に満ちた世界に対してだ。お前らを相手にするなら、ダアトに味方をする時になるがな」
「分かっている、それは。だからこそ安心出来る・・・最早貴方が敵に回ることはないのだとな」
「まぁそういうことだ。後はマルクトをお前がどれだけ秘密裏にこちらに寄らせるかにかかるがな」
「そこは安心していてくれ。マルクトの軍を束ねるマクガヴァン元帥も事情を知った上で私に力添えをすると言ってくれている。あの人の人柄を考えれば少なくとも無下に扱われることはないだろう」
「それならいいがな」
信長がもうあえて敵に回らない限り戦うことはないと言い切り、伯爵もまたそうならないという根拠は協力者にあると返す。



・・・実の所、キムラスカ側だけの行動でガルディオス一族を助けられた訳ではない。なら誰が協力したのかと言えば、伯爵が言ったようにマルクト軍の元帥であるマクガヴァンの存在があったからである。そうでなければガルディオス一族をマルクト軍の目に止まらぬように連れ出すなど難関としか言いようがない・・・ホドの領主であるガルディオスを、マルクトが守らない訳がない為に。

故にガルディオス側は信頼出来る人物で事実を知れば協力してくれるだろう人物と思いマクガヴァン元帥に協力を願い、最初こそはキムラスカの策略ではないかと渋りこそしたが与えられた情報及び、後にホドが渡された情報通りに消滅したことからキムラスカ側を信頼してくれたのだ。これから重要なのはキムラスカといがみ合う事ではなく、ダアトと預言をいかに排除するかをキムラスカと共に考える事なのだと。

それでその結果としてホドが消滅した後もしばらく戦争は続いたのだが、出来るだけ消極的・・・それでいてダアト側には激しく映るような演出をして、キムラスカと共にホドでの戦争を終えたのだ。実際の被害を両軍共に出来るだけ少なくする形でだ。



(クククク・・・ケケケケ・・・まこと、順調よ・・・この調子で行けば、来るべきダアトとの戦への積み重ねは無事に進める事が出来るわ・・・!)
それで伯爵と話を進める中で信長は心中で盛大に笑う。自身の策がうまくいっていると。
(この世界のあらゆる所の中核を為す預言・・・慣れ親しんだ者からすりゃ預言に従うのが正しい上に楽に生きられるだろうが、俺から言わせりゃそれを利用してるダアトにいいように転がされてるだけだ。酸いも甘いも、白も黒も、全部ダアトに都合が悪けりゃ都合のいい方に仕向けられる・・・ダアト側に産まれりゃ俺の考えも少しは違ったろうが、こうやってキムラスカの人間として産まれた以上は利用されねぇようにするためにもこうするのが最善の手段だ。預言通りになどしてダアトに従って忍従の時を過ごすなどより、ずっとずっとマシだ)
更に信長はダアトに対して辛辣でいながら、確かな自由に繋がると確信していた。預言を信じる=自分達の不遇に繋がると。
(まぁこんな世界でこんな立場として生まれ変わったからこそ、前みたいに俺が君主として動くなんて無理があったがむしろ踏ん切りがついた・・・人の心は利益と恐怖のみで動くもんじゃねぇ。それをこの世界でよく知ったからこそ俺はインゴベルトにクリムゾン達を本当の意味で国主にし、国を導かせる為の協力者になると決めたんだ・・・その為にもダアト、更に言うなら預言の支配をぶち壊す・・・!)
そして前世の記憶を振り返った上でその決意を新たにする。ダアトと預言を是非とも除くと・・・





















・・・そして16年後、その時は訪れる・・・






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