漂流魔王、異物として深淵世界を変える 前編

「・・・さて、戦争は終わった。後は秘密裏にお前らがマルクトに帰るようにするだけだが、本当にいいのか?ガキ共とペールってじいさんだけをキムラスカに残すなんてよ」
「・・・本人達の希望もあるが、今のそちらとなら協力出来ると思ったから我々は許可をしたのだ。それに我々からそちらに対する信頼の証でもある。後のガルディオスを継ぐガイラルディアも含め、娘達を預ける事はな」
・・・ラーデシア大陸の、後にナム孤島と呼ばれる信長が作った隠れ家の船着き場。そこでガルディオスの当主とその婦人であるユージェニーと信長は会話をしていた。二人の子どもを本当にキムラスカに残すのかという会話を。
「・・・ま、そこまで信頼してくれんのはこっちとしてもありがたいが、いずれマルクトに帰る時にガルディオスの跡取りとして経験不足だなんて事態になっても知らねぇからな」
「その辺りはマリィベルとペールにガイラルディアの教育は任せてある・・・まぁそちらにも勉強に必要な書物の提供など協力していただきたいことはあるが・・・」
「あくまでガキ共を預かるのはクリムゾンで、ガキ共も身分を隠しつつ使用人として動いてもらわなきゃなんねぇ身分だからな・・・まぁ一応はクリムゾンには言っといてやるが、過度な期待はするなよ」
「分かっている・・・そこから先はマリィベル達の努力次第だとな。そしてあの子達ならなんとか出来るとも確信している」
ただ当主が引く気はないといった様子に信長は娘達の状況についてを言うが、理解していると自信を覗かせた笑みを見せる。



・・・ガルディオスの当主達と平温無事に会話をしていることから分かるよう、信長達はホドでの戦で多数の住民を含めた上でガルディオスの一族を秘密裏に救い出す事に成功した。それもナム孤島に連れていき、ダアトにその生存を知られぬようにする形で。

それで戦争が終わりガルディオスの一族をマルクトに返す予定だったのだが、子ども達が揃ってキムラスカに恩を返したいと切り出してきたのだ。そして当主達もそれに賛成したのである・・・ここまで凝ったことをして自分達を助けたのだから危険は無いだろうと。

それでインゴベルト達とも話をした結果、ガルディオスの子ども達はクリムゾンの元で新入りの使用人として表向き雇用すると言うことになった。ここでインゴベルトと言うか城の使用人でない理由としては流石にまだ十にも行かないかそこらの子どもに城の使用人は難しいと言うのもあるが、あまりインゴベルトに近すぎる位置にいても怪しまれかねない為に。

そういった理由があってワンクッション挟む意味合いも含めてクリムゾン預かりとなったのだ。使用人として働いてもらう傍ら、裏ではガルディオス側から偽装して送られてくるマルクトの情報やら何やらを受け取る窓口としての役割を担う形で。



「しかし・・・今思い出してもあそこまで事がうまく運ぶとは思わなかった。ダアトが戦況を無理矢理に進めに来る可能性が高いとは聞いていたが、あんな方法で神託の盾の邪魔に目眩ましをするとはな」
「表向きダアトからすりゃキムラスカに味方をするわけにゃあいかねぇ。だが戦況を混乱させるだけが目的の戦で、進んで死にたいなんて思うような馬鹿はそうそうはいねぇ・・・そこを狙って神託の盾が来そうな地点を予測して譜術に火薬の爆発の雨あられを落としゃ、そんなもんに巻き込まれて犬死にしたくねぇ神託の盾が上にする報告なんざ、戦況は激しく自分達が介入する隙など元より存在しない・・・って所だ。その裏でどういった事が起きてるか、炎の壁を前にしてもうやることはないとそこにどうにかして行くと考えるのを逃避する形でな」
「・・・確かめる術もだが、そう考えることすらないようにするか・・・もしキムラスカと意地でも戦うと選んでいたら、貴方と戦っていたのだろう。そうなっていたら私は成す術もなく負け、一族共々死んでいたのだろうな・・・」
そこでふとホド戦争当時の状況を振り返る伯爵に信長は嬉々と神託の盾を邪魔した時の事についてを解説しながら話し、その中身にしみじみと伯爵は感じる。信長に勝てる気がしないと言った気持ちを。








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