漂流魔王、異物として深淵世界を変える 前編

「ま、そうするにはこっちもある程度腹の内をさらさにゃならねぇ・・・そしてその腹の内が何かって言えば、ナタリア達の事実についてだ」
「なっ・・・!?」
「ダアトの者達どころかキムラスカの者にすらほとんど知る者はいない事実なのだぞ!?それを明かすというのか!?」
だが信長が口にした案にインゴベルトとクリムゾンは驚愕に表情を染めた、極秘のナタリアの事実をユージェニー達の為に明かすのかと。
「あぁ、そうだ・・・ユージェニーにガルディオスの奴らをこちらに引き込むには、それなりの材料を向こうに提供しなきゃならねぇ。だがキムラスカでの地位に金銭なんかでユージェニー達が動く訳じゃねぇってのは言った通りだが、ならどうやって引き込むかとなったら・・・こっちが敵じゃねぇってことに加えて、預言による戦争を起こしてほしいってダアトが願ってるってるって証拠を見せるのが条件になる」
「それが・・・ナタリアの事実だというのか?」
「そうだ。まず俺らがダアトの望む預言による戦争を望んじゃいねぇから協力して被害の少ないやり方を選ぶぞなんてだけ言ったって、まず向こうが信じるなんて思わねぇ。精々妄言だとか後で寝首をかきにくるつもりだとでも言うのが関の山だろ・・・今のキムラスカとマルクトの関係じゃよ」
「・・・確かにそうだな・・・今の両国の関係では生半可な言葉で向こうが納得するとも思えん・・・それなら向こうが信用する、いやせざるを得ない程の何かが必要だと言うことだろうが・・・そしてそれが、ナタリア様の事実だと・・・」
「まぁ普通はそんなことは言い出しはしねぇだろうが、ユージェニーとガルディオスの奴らの引き込みに成功さえすりゃ目下預言の中で一番重要とされる・・・十数年後に控えたアクゼリュス消滅からのマルクトとの戦争を避けるための手札として、十分に役立ってくれると思うぜ。こっちが預言による繁栄なんざ望んでないって証明の為の手札としてな」
「・・・ふむ、後々の事を考えてみれば確かにユージェニーとガルディオスを引き込めばマルクトとも渡りをつけるには絶好な物となるだろう・・・だが腹の内を明かすとなれば、やはりその危険性と言うものも承知で動かなければならんというのがやはりどうにもな・・・」
そこからいかに信長はナタリアの事実を明かすことに関してメリットがあるのかを語っていき、インゴベルトは納得はしつつもやはり気乗りしないといったよう危険性についてを口にする。
「気が乗らねぇってのは分からねぇでもねぇ。折角娘達の安全を買えたんだからな・・・だがいつまでもナタリア達を日陰の存在にしたくないと言ったのはお前で、いつかはメリルをバダック達の子どもとして本当の親子に戻すとも約束したんじゃねぇのか?」
「うっ・・・そ、それは・・・」
「それにだ。危険性なんてものは何にだって付いてくる・・・どんな風に策を練って動いたって、戦場じゃ一つ油断すりゃ味方の流れ弾一発で死ぬことだって十分に有り得るもんだ。確かにナタリアの事実を明かすことに関しては成功するかどうかは確実なもんじゃねぇ。もし向こうが信用せずにダアトにその情報を流せばこっちの思惑が大幅に崩れることになる・・・が、ユージェニーにガルディオスも丸っきりの馬鹿じゃねぇだろう。そんなダアトにバラされたらこっちの立場がまずくなりかねない事を聞かされて、簡単にダアトに情報を流すと思うか?そして更にそこに戦争が預言に詠まれてホドの消滅が詠まれてると知らされ、終いにはダアトがそれを望んでるとなりゃ嫌が上にでも俺達の話は無視出来ないだろうよ」
「・・・ナタリアの事を明かした上で、預言の事を明かすか・・・それなら二重に向こうからしても蔑ろに出来ないということか・・・それならナタリアの事を明かしても、一概に向こうがダアトにそれを明かす可能性は低いと・・・」
しかし信長がバダック達親子の事に関して触れた上で預言について向こうに信じさせる意味合いが強いと語ったことに、インゴベルトは先程とは違い前向きな声を漏らす。ナタリアの事実を明かすことについてを。










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